J-REITの登場人物の紹介その5です。


 投資法人は「投資信託及び投資法人に関する法律」(投信法)にて一定の業務を外部に委託しなければなりません。
 詳しくは第117条に記載がありますのでご興味のある方はご覧になってみてください。
 1.発行する投資口及び投資法人債を引き受ける者の募集並びに新投資口予約権無償割当てに関する事務
 2.投資主名簿、新投資口予約権原簿及び投資法人債原簿の作成及び備置きその他の投資主名簿、新投資口予約権原簿及び投資法人債原簿に関する事務
 3.投資証券、新投資口予約権証券及び投資法人債券(以下「投資証券等」という。)の発行に関する事務
 4.機関の運営に関する事務
 5.計算に関する事務
 6.前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事務


 簡単に言うと会計事務や会議体の運営、投資法人債(社債)の募集や投資主名簿の管理などを外部に委託します。
 
 会計事務を委託先として多いのは信託銀行です。大手の信託銀行なのでデータの正確性などは高いですが実際に投資法人をコントロールするAMからすると信託銀行はあまりメリットはありません。
 
 一般事務受託銀行に会計事務委託するデメリット 

 ①信託銀行は会計事務所ではないので税務申告は行えません。ただ仕訳を切るだけです。
 →税務に関するアドバイスは受けられません。 

 ②投信法第第百十九条一般事務受託者は、その任務を怠つたときは、投資法人に対し、連帯して、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。というものがあります。つまり会計データの確認に多大な時間にかかります。
  →一般企業で言うところの月次決算を行うことができません。AMが迅速に手をうつにはAM会社自身で会計データを作成する工夫が必要です。
 

 一般事務受託銀行に会計事務委託するメリット

 (デメリットばかり言っても仕方ないのでメリットも探しました。(笑))

 ①資金調達の交渉カードとして使える→一般事務やらして上げるからレンダーとしての融資金額を増額してもらうor金利を下げてもらう等

 ②物件を受益権としている場合その物件にかかる信託報酬を下げてもらうよう交渉できる。

 運用資産額の大きい投資法人などは会計事務所、税理士法人などに別途会計データの作成を依頼しているところもあります。実務ベースで言うと資本支出工事を行った場合などの減価償却費の計算は固定資産台帳をベースに行うのですが信託銀行に依頼するよりも会計事務書に依頼した方がコスト・スピードともに優れています。
 
 J-REITは開示資料を見る限り一見開かれているように見えますが、投資法人をとりまく「登場人物達」にはこれ以上ない金づるです。ここを一般の投資家の方達に知っていただきたいと思っています。


J-REITの仕組みバックナンバー


 J-REITの仕組み・投資法人スキーム
 J-REITの仕組み①投資法人
 J-REITの仕組み②アセットマネジメント会社(AM会社)
 J-REITの仕組み③プロパティマネジメント会社(PM会社)
 J-REITの仕組み④レンダー(金融機関等)
 J-REITの仕組み⑥一般事務委託会社(証券事務)
 J-REITの仕組み⑦監査法人(会計監査人)
 J-REITの仕組み⑧資産保管会社