英国のメイ首相は3月29日、EUに対し離脱を通知しました。
 
 英国はEUからの離脱にあたっては、移民の制限や司法権の独立を重視し、EU単一市場から完全撤退するとしています。また離脱後はEUと包括的な自由貿易協定(FTA)の締結を目指し、EU予算も適度に負担する可能性を示唆しています。これに対しEUは、加盟国の結束に影響がでないよう英国に対しては厳しい姿勢で臨 むと思われ、今後の交渉は難航も予想されます。
 
 すでに離脱協定に関しては、最大600億ユーロとされる離脱費用(EU予算への英国の未払い分担金)の扱いが争点となっています。また英国は、離脱協定だけでなく将来協定の交渉も同時並行で進めたいとしていますが、EU側はまず離脱協定の交渉を優先し、離脱費用や英国在住EU市民の権利保障などの合意を経てから、 将来協定の締結を目指して交渉を進めることになります。
 
 EU離脱までの道のりは4月29日にEU首脳会議が開催され、離脱交渉のガイドラインが採択される見通しです。実質的な交渉は5月末頃から始まる見込みで、EU側は2018年10月の合意を目標としています。2019年の年初にかけて、英国議会およびEU27カ国の議会と欧州議会で合意内容の承認が行われた後、2019年3月30日に英国は正式にEUから離脱することになります。

 EU離脱スケジュールまでの流れ

2017年4月29日 EU首脳会議で離脱交渉ガイドラインの採択

2017年5月末 実質的な離脱交渉開始

2017年6月22日 EU27ヶ国と英国の公式会議

2017年10月19日 メイ首相が離脱条件の合意予定

2018年10月 最終合意(EUの交渉主席担当官目標)

2019年年初 英国議会、EU27ヶ国議会、欧州議会で合意内容承認

2019年3月30日 英国が正式にEUから離脱


貿易相手国の輸出入割合からJ-REITに与える影響は低いと思われる。

 英国の主要貿易相手国を見てみるとEUに対して対輸入総額が53%、対輸出総額は47%有るので、ドイツやフランス、ベルギーの資産を多く所有する欧州REITは間違いなく影響が出ると思います。特に分配金を受取る場合の為替と資金調達における金利負担の変動リスクが大きくなると考えられます。肝心の日本では対輸入総額が2%、対輸出総額は2%となっているため日本企業や、日本にオフィスを構える法人が退去という形で影響を受ける可能性は低いと思われます。ただ、物流施設についてはテナントの収益悪化の可能性は有るとは思いますが退去するまで影響を与える可能性は低いと考えられます。

 ①英国の主要貿易相手国
 
 EU 対輸入総額53%、対輸出総額47%
 
  新興アジア諸国 対輸入総額15%、対輸出総額7%

 中国 対輸入総額10%、対輸出総額4%

 米国 対輸入総額9%、対輸出総額13%

 日本 対輸入総額2%、対輸出総額2%