2016年からの危険物倉庫の全体傾向は、国内生産の減少基調を受けて、輸入が増加傾向にあります。輸入は基本的に在庫型が多いため、今後はより低コストでスペースに余裕がある内陸のシフトする可能性もあります。危険物倉庫業者にとっては、「輸出貨物の方が回転率がよく、できれば輸出貨物を取り込んで収益を高めたい」という思惑もあるようです。

 さらに、物流業界全体では大きな課題となっている人手不足により、自動倉庫による省人化への注目も高まっていいます。危険物の自動倉庫は東日本大震災で評価を下げた面がありましたが、土地の有効活用や省人化の観点から、再び導入機運が高まってきています。ということは危険物倉庫特化型REITがあれば魅力的な投資商品になるのではないかと考えてみました。



メリット①タンクコンテナはニーズが高い


 危険物物流事業者の中には機動性や使い勝手のよさからISOタンクコンテナの利用は拡大するで、ISOタンクコンテナからの受け入れやローリーなどへの詰め替えを行う「マルチワークステーション」の建設が増えています。
 また、コンテナヤードにおける危険物蔵置規制の強化を受け、港から近い湾岸部ではISOタンクコンテナの保管施設のニーズも拡大していることが背景に有ります。

 グローバル規模では、ISOタンクオペレーター、リース業界ともに大型再編が相次ぎ、競争はさらに激化しています。日本市場でも日本国内のタンクコンテナへの切り替え需要はほぼ一巡し、ドライバー不足を背景としたモーダルシフトなどで新たなニーズも生まれているようです。倉庫の自動化はどのテナントでも評価される事象だと思われるのでバリューアップ工事を行うことで契約期間の延長や賃料増額が期待できます。



メリット②化学メーカーは土地の利用効率が低い


 汎用品を中心とした化学品の海外生産シフトが進んでいますが、化学メーカーは海外で生産し、日本に輸入するケースが増えています。そのため国内では輸入製品の取り扱いが増加するのです。
 また、危険物の保管にかかるコンプライアンスの浸透も旺盛な需要の一因となっていいます。ただ、危険物倉庫は保有空地の確保など土地の利用効率が悪いため、積極的に投資するのは危険物を扱う顧客とのパイプの太いプレイヤーに限られているのが現状で、危険物倉庫の稼働率は概ね堅調で、保管量は高水準で推移しているもののエリアによっては明暗が分かれている部分もあり、港湾部は高稼働ですが、内陸部の倉庫の一部では空きがでているところも有ります。
 さらに化学品の国内生産が単価の低い汎用品から高付加価値品にシフトする流れの中にあり、それに対応して定温危険物倉庫の需要が大きくなっています。中古の倉庫であってもバリューアップ工事で定温危険物倉庫に改良しテナントのニーズを満たすことで賃料増額等の施策を採ることも可能ではないでしょうか。
 

 危険物倉庫は安全性が大変重要です。危険物倉庫をJ-REITで運用することができればこの安全性が大儀銘文となるので中古物件であってもバリューアップ工事によりスポンサーが工事を場合、スポンサーが得られる利益は大きくなると思います。
 多くの化学メーカーは自社の土地で倉庫を建設しているところに土地利用効率の悪さの原因が有ると考えられます。化学メーカーはあくまでも化学品を作り・販売することが目的であるので不動産の専門家がほぼ不在の状況だからです。倉庫のニーズは有り、バリューアップ工事も行い安いという条件が整っているので物流系J-REITの各投資法人は手を出しやすい環境であるはずです。

 
 残念なのはJ-REITのスポンサーには危険物物流や危険物事業者に関するノウハウを持っている企業は皆無であるというところですね。