2019年2月期決算のJ-REITの安全性について分析しました。

・有利子負債利子率
20190503J-REIT有利子負債利子率
20190503J-REIT有利子負債利子率2

 2月・8月決算投資法人の有利子負債利子率も他の決算期の投資法人同様に減少している傾向にあります。ザイマックスリート投資法人は2018年8月期の有利子負債利子率が立ち上げ1期目ということもあり、運用日数で割って計算すると極端に低い数値となっていますが、2019年2月期の今回の数値が基本的な利息負担割合となります。

 他にも三菱地所物流リート投資法人が前期よりも上昇していますが、こちらは以下のLTVが上昇しているため新規の借入れによる影響と考えられます。特にシンジケートローンで資金調達をするとメガバンクや信託銀行ならいざ知らず、地方銀行がシンジケート団に加わっている場合は金利の足並みが揃わず地方銀行の金利(メガバンクよりも高い金利)にあえて合わせられてしまうというところがあります。三菱地所物流リート投資法人の物件の評価が低いという訳では無いのですか、数値だけを採ると悪く出てしまう場合も有るので場合によっては以下のLTVやDSCRなども組み合わせて見ることが必要となってくるのが分析の難しいところです。

 全体的に各金融機関(レンダー)のJ-REITに対する融資姿勢については特段変化は無かったようです。ピンポイントにレンダーを見るとやはり地銀は不動産関係企業やオーナーにおける融資を絞っているようですが、意外にも気にしているのは地方銀行の支店のみで、本店はがっつり不動産にローンを付けている状況も多いようです。そもそも不動産を警戒している金融機関はJ-REITにも二の足を踏んでいるのでそういった地銀には運用会社(AM会社)もシンジケートローンのアレンジャーも声を掛けないので厳密にはJ-REITに融資しているレンダーの融資姿勢に変更は無いということになります。


・LTV(有利子負債比率)
20190503J-REIT有利子負債比率(LTV)
20190503J-REIT有利子負債比率(LTV)2

 LTVは有利子負債÷総資産で計算しています。1.7月決算の投資法人のLTVも低めの傾向です。しかし、上記で述べたようにレジデンス系J-REITである日本アコモデーションファンド投資法人の安全性については目を見張るものがあります。ここまでずっと50%台でずっと推移しているところから完全にLTVを意識してい財務戦略をコントロールしているというところか分かります。J-REITは本来はミドルリスクミドルリターンで中長期に渡り分配金を投資家ら支払う仕組みなのでこういった着実に結果を積み重ねている投資法人については信頼できると思います。というか、実際にAMとして働く私もこういった運用をされると負けていられないという気になります。

 多くの投資法人が現在はLTVの水準を50%としていながら42%~47%辺りの水準を意識しているように感じられます。三菱地所物流リート投資法人、ザイマックスリート投資法人については今後も低い水準で推移すると考えられます。物件を取得しないことには分配金も成長しないですし、ましてや投資法人独自の個性を発揮しづらいというところもあるのである程度の物件数はどうしても必要になります。ただ、森トラスト・ホテルリート投資法人のようにスポンサーと一体になった運用&ブランド戦略で内部成長で分配金を望む投資法人もいるのですがこちらは少数派です。