2019年2月期決算のJ-REITのNAV倍率、含み益、稼働率の推移を見ていきます。

・NAV倍率
20190504J-REITNAV倍率
20190504J-REITNAV倍率2
 
 2月の投資口価格の動きについてですが、東証REIT指数が連日で2年1か月ぶりの高値を更新しました。米国の金融引き締め(利上げ、保有資産の縮小)観測が後退し、長期金利がマイナス圏まで低下する中、相対的に高い分配金利回りに着目した買いが、J-REITを押し上げたようです。ただ、その後は利益確定売りに押される展開となっていました。米国の政府機関の閉鎖に対する警戒感が後退したことや、3月1日が期限である米中通商交渉の進展期待を背景に投資家心理が改善し、下げ幅を縮小しましたが、2月15日には再び利益確定売りが優勢になりました。また、日銀が2月8、12、15日に各12億円、合計36億円のJ-REITの買入れを行いました。

 NAV倍率は相対的に高い状況なのですが、大きな外部成長が見られなかった三菱地所物流リート投資法人とザイマックスリート投資法人については減少しています。買いと言われれば買いなんでしょうけど、まだ具体的な方針として表れていないので買うことには躊躇しますよね。上場して日の浅い投資法人は特に資本剰余金からの利益超過分配を平気で行うので表面の分配金だけ見ると配当金利回りが上昇するので買いタイミングだと思ってしまう投資家さんも多いのではないかと思います。

 ただ、利益超過分配金は投資法人本来の運用における実力の分配金ではないため利益超過分配金ありきの配当金利回りで投資決定はすることは危険だと思います。NAV倍率は高いのですが中長期の投資で有効なのは日本アコモデーションファンド投資法人や日本リテールファンド投資法人といった実績を積み重ねている銘柄が安心だと思います。

 
・含み益
20190504J-REIT含み益推移
20190504J-REIT含み益推移2

 含み益は鑑定評価額-帳簿価格で算定しています。今期も順調に含み益を積み上げています。野村マスターファンド投資法人は2015年10月に新設合併したために運用している物流施設、レジデンス及びオフィスビルについては合併により時価取得しています。また、2016年5月にはトップリート投資法人との合併を成立させています。そのため鑑定評価額-帳簿価格の差額は小さいので含み益は伸び辛いはずなのですが物件数が多いこともあり既に含み益が1,000億円規模に拡大しています。伸長率については個人的にはかなり怪しいと思っていますが・・・。

 福岡リート投資法人、森トラスト・ホテルリート投資法人なんかは自然に伸びていると感じます。物件も少ないので伸び率が非常に分かりやすいというのもありますが、稼働率により将来CFが上昇することで鑑定評価額が上昇するため大きな時価の変動はここでおこります。

 物件の時価として利用される鑑定評価額ですが、これは物件を売却する時に指標となっているものなので鑑定評価額以上で売却できれば資産運用会社(AM会社)としては100点だと思います。しかし、外部の人間もこの不動産鑑定評価額を基準にAM会社が売却を検討するということは知っているので建替えにより分譲で売却を考えているような企業が相手だと高値で売り安いんですよね。

 反対に鑑定評価額以下ましては帳簿価格以下で売却している場合(不動産売却損)が発生する場合はその物件の取得時に高値で取得してしまったという場合もありますが、昔の法律では適法だったものが今の法律では違法として判断されてしまいそのリスクが売却価格の下落という形で表れてしまう場合も多いです。特に「条例」は町や区によって簡単に作られるので法務デューデリをを行うと直ぐにヒットしてしまうので売却相手に直ぐにバレてしまうんですよね。
 

・稼働率
20190504J-REIT稼働率推移
20190504J-REIT稼働率推移2

 2.8月の投資法人の稼働率は着地しては高水準なのではないでしょうか。森トラスト・ホテルリート投資法人はホテル系J-REITによくあるオペレーターに対する稼働率です。ホテル系J-REITについては客室稼働率についてのプレスリリースがホームページで毎月公表されているので詳細はそちら参考にしてもらった方が良いのですが、客室稼働率は変動賃料算定については参考になるのですが、固定賃料のホテルも多いのでこの記事ではオペレーターベースの稼働率を載せています。

 期末ベースではヒューリックリート投資法人は100%を達成しました。中小規模のオフィスビルなので稼働率を100%にするには大規模ビルに比べて楽な面はあるのですが、中小規模のオフィスビルはテナントは失礼ながらケチなので直ぐに他の賃料が安いビルに目移りしてしまうので相手方によっては中々決まり辛いといった側面もあるのです。

 今後の推移については日本リテールファンド投資法人・オリックス不動産投資法人については減少する期が多くなるのではないかと推察しています。日本リテールファンド投資法人は一番分かりやすいと思いますが、商業施設のため2~3年程度でのリニューアル工事が行われるため相当競争力がある物件でなければリニューアル工事のタイミングで退去を選択するテナントも多いと思います。オリックス不動産投資法人も商業施設が27棟程度あるため今後はリニューアル工事を取り入れていくと考えられます。