2019年4月期決算のJ-REITのNAV倍率、含み益、稼働率の推移を見ていきます。

・NAV倍率
20190702J-REIT(4.10月)NAV倍率推移
20190702J-REIT(4.10月)NAV倍率推移2
 
 4月の投資口価格の動きは、主に金融機関からの利益確定売りが出たことや、長期金利が上昇したことなどもあり、やや軟調な展開となりました。もっとも、東証REIT指数が1,870ポイントに近づくと押し目買いも入り、底堅い動きが続きました。日銀は1日から4日にかけて、連日でJ-REITを買い入れました。月半ばにかけても、利益確定売りがやや優勢になりました。ただ、相対的に高い分配金利回りに着目した買いなどから底堅く推移し、東証REIT指数は1,870ポイントを挟んでの一進一退の動きが続きました。

 現在の投資口価格は高値圏でのやや神経質な展開を予想します。東京都心のオフィス空室率が過去最低まで低下するなど、良好なオフィス市況が継続しています。米連邦公開市場委員会(FOMC)で早期の利下げが示唆されると、買い安心感が広がりそうです。とはいえ、東証REIT指数が5月以降の天井となっている1,950ポイントに接近すると、利益確定売りに押される可能性があります。また、J-REITは貿易摩擦の影響を受けにくいものの、米国が中国からの輸入品3,000億円相当を対象とした追加関税第4弾を発動した場合や、FOMC で早期利下げに慎重な姿勢が示された場合には、金融市場が不安定になる可能性があり注意が必要です。

 NAV倍率は前期よりも上昇しているところがほとんどですね。またJ-REIT人気が戻ってきているような気がします。星野リゾート・リート投資法人は1倍を超えても良いのですが投資口価格が元々高いということもあり、個人投資家さんが投資口を取得にしくいことが影響していると思います。反対にインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人の場合は過去に投資口分割を行っており、1口当たりの投資口価格が1万円台ということで個人投資家さんが取得しやすくなっていることからじわじわNAV倍率が上昇してきていると考えられます。


・含み益
20190702J-REIT(4.10月)含み益推移
20190702J-REIT(4.10月)含み益推移2

 含み益は鑑定評価額-帳簿価格で算定しています。4.10月の投資法人も順調に含み益を積み上げている状況です。どこの鑑定評価会社もまだ算定額について保守的に算定しているところは有りません。鑑定評価額は積算価格、マーケット価格、DCF法にて算定した価格の3つを勘案して決定することが慣習です。マーケット価格は恣意が入りにくいので鑑定評価額が下落する場合は積算価格、DCF価格の前提条件に変更があった場合に大きく下落することになります。結局鑑定評価額の下落は地震の物件だけでなく同地域にある別の物件のマーケット価格にも及ぶのでどこのエリアの物件の価格が下落傾向にあるかかが重要になります。

 ケネディクス・オフィス投資法人やプレミア投資法人のような長期に渡り保有している物件が残っている場合は含み益をだいぶ含んでいる状況です。また、オフィスビルやホテル、物流施設のように将来CFの金額が大きくなりがちな投資法人についても含み益が発生しやすいといえます。反対にレジデンスやヘルスケア施設は含み益が発生にしくいため含み益の上昇幅は小さくなります。ただ、含み益があるということは物件売却時に高値で売却できる(売却益を発生させる程度の価格での売却ができる)という予想に過ぎません。この含み益自体は投資家さんの分配金に影響を与えるものではありません。


・稼働率
20190702J-REIT(4.10月)稼働率推移
20190702J-REIT(4.10月)稼働率推移2

 4.10月の投資法人の稼働率は割と安定しています。プレミア投資法人が運用物件のほぼ半数がレジデンスであるためポートフォリオ上の稼働率は低めの97.7%ですが、レジデンスの稼働率は概ね良好だったのではないかと思います。反対に積水ハウスリート投資法人の方は合併以降、既存の物流施設だけでなくレジデンスをポートフォリオに加えている関係上稼働率が100%から下回ることが続いています。今後、この傾向は変わらないと思いますがレジデンスはだいたい1ヶ月の退去予告で入居者が退去できてしまうアセットなので稼働率を100%にすることはかなり難しいです。それでも97.5%はまあ妥当と言えなくもないです。しかし、プレミア投資法人と違って積水ハウスリート投資法人のレジデンスはスポンサー開発の物件を多いのためスポンサーから取得した物件くらいはもっと高い稼働率を目指して運用して欲しいと思います。

 一方でインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人とトーセイ・リート投資法人の稼働率が若干低いと感じます。ケネディクス・オフィス投資法人やプレミア投資法人のオフィスビルの稼働率と比べるとポートフォリオ全体で98%はもうちょっと頑張って欲しいですね。特にインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人の場合は過去に99.6%も達成したことがあるので重点的に力を入れて運用していけば達成不可能では無いと思います。トーセイ・リート投資法人の場合は香ばしい地域の物件を取得する傾向があるため立地による影響で既存テナント退去後の新規テナントを見つけてくることが私が思っている以上に実は難しいのかもしれません。