2019年6月期決算のJ-REITの安全性について分析しました。

・有利子負債利子率
20190905J-REIT6.12決算投資法人有利子負債利子率
20190905J-REIT6.12決算投資法人有利子負債利子率2

 6月・12月決算投資法人の有利子負債利子率は従来から変わらず、減少傾向にあります。2019年6月期もレンダーからの資金調達環境は良好であったことが伺えます。不動産を取得する際のローンの審査が通らないというのはあくまでも個人の話、法人や特にJ-REITの場合は引き続きバンバン借入れることができる状態です。レンダーも少しでも安定しているところに貸し付けたいと考えているので各投資法人とニーズが一致しているんですよね。それでも「前例が無い」を理由に指を加えている地方銀行もいます。(主に第二地銀です。)

 日本ビルファンド投資法人は支払利息負担が減少しています。やはりこれは投資法人としての実績とスポンサーの信用力によるものと考えられます。日本ビルファンドは上場J-REITの第一号ということもあり資産運用会社が持つ物件やマーケットのトラックレコードは一番多いのです。約その1年後に上場した日本プライムリアルティ投資法人の有利子負債利子率はあまり下がっている印象はありませんね。

 日本プライムリアルティの場合、オフィスビルが主力でありながら運用物件の25%が商業施設ということで運用によって分配金のインセンティブが得られるという点では日本プライムリアルティの方が良い銘柄だと思います。ただ、レンダーからの評価としては日本ビルファンドの上です。これはレンダーは儲けよりも安定性を採っているということが分かると思います。

 ここ数年の傾向を見てみると投資法人債を発行してもレンダーがあまり高い金利を要求していないという点が挙げられます。借入金の場合は借入れから返済までの期中に約定弁済が決められていることが通例です。投資法人債の場合は期末一括返済として発行されることが通例です。投資法人としては約定弁済を設定した方がレンダーからの評価は高くなります。レンダーからすると定期的に元本を返してくれる借入金よりも、一括返済の投資法人債の方が金利が高くなります。しかし、最近ではレンダーも通常の借入金についても期日一括弁済として貸し付けているケースが多く、結果として投資法人債と同様のリスクが金利として繁栄されていることから借入金から投資法人債に切り替えても支払利息負担が大きく変わらないのはそのためです。


・LTV(有利子負債比率)
20190905J-REIT6.12決算投資法人LTV推移
20190905J-REIT6.12決算投資法人LTV推移2

 LTVは有利子負債÷総資産で計算しています。運用実績が長い日本ビルファンド投資法人や日本プライムリアルティ投資法人はLTVが低めを維持しています。最近のJ-REITの流れでは42~44%前後なので日本ビルファンドの41.7%、日本プライムリアルティの40.9%また、MCUBS MidCity投資法人の42.2%と代替その辺りのレンジに入ります。これらの投資法人は外部成長を望んでいるものの不動産マーケットを考えると中々取得できる環境という程でもないためいつでも借入金や投資法人債で資金調達できるようにLTVを抑えているという点、また、LTVが低いということは有利子負債を圧縮していることを意味するため支払利息が抑えられ、結果として当期純利益が上昇し分配金が上昇するというメリットが有ります。

 反対に、日本リート投資法人やインヴィンシブル投資法人のようにガンガン物件を取得している投資法人の場合は借入れや投資法人債の発行を連発するためLTVが高めです。特に大量に物件を取得する場合は公募増資と絡めますが、実際は機関投資家を含め投資家さんがどれだけ集まるかは分かりません。一応、主幹事証券会社が予測を示してはくれますが資産運用会社も投資法人もそれを鵜呑みにはしません。

 証券会社の予想から更に厳しく評価し投資家さんからの資金が集まりにくいということも想定し借入金は多めに調達する計画で動きます。特に機関投資家はオフィスビルや商業施設など統計資料も入手しやすくマーケットを知ることが難しくないアセットを主力とする投資法人の場合は評価が高く資金も集め安いです。反対にレジデンスの場合は見送ってしまう機関投資家さんは多いです。機関投資家の方達は物件を運用し内部成長で如何に成長していくかを厳しく見ています。何も考えずスポンサーから物件を取得しているような投資法人の場合は見向きもしません。よって公募増資よりも借入金での資金調達の比重を高めるためLTVが高めであるという背景もあります。