2019年6月期決算のJ-REITのNAV倍率、含み益、稼働率の推移を見ていきます。

・NAV倍率
20190906J-REIT6.12決算投資法人NAV倍率
20190906J-REIT6.12決算投資法人NAV倍率2
 
 相変わらず米国と中国間の貿易摩擦の激化が続いていますが、6月はパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が米国経済の先行きに対する貿易摩擦の影響を注視し、必要であれば柔軟な金融政策をとる考えを示したことで、米国の利下げ観測が強まりました。投資家の過度なリスク回避の動きが後退するとともに、日米の長期金利が低位で推移する中でJ-REITの相対的に高い分配金利回りに着目した買いが継続しました。一旦利益確定売りに押されましたが、米国がメキシコ製品への関税を先送りしたことなどを好感し、6月半ばにかけても底堅く推移しました。

 6月決算の投資法人はNAV倍率が上昇している投資法人が多いです。全体的に前期よりも高まってていることから各投資法人の個別性というよりも株式マーケットにおいてJ-REIT市場に安心感が広まっているということが言えると思います。

 現状は、高値圏での上値を探る動きとなっており。東京都心のオフィス平均賃料が67か月連続で上昇するなど、良好なオフィス市況が続いています。8月下旬のジャクソンホール会議(経済シンポジウム)で米国の利下げ継続が示唆されると、J-REIT市場に買い安心感が広がる可能性があります。国内の長期金 利は日銀が許容する下限を下回っており、低下が限定的になると、J-REITの上値が重くなる可能性があります。対中の制裁関税第4弾の発動により、金融市場が不安定になることには注意が必要ですが、貿易摩擦の影響を受けにくいことから、高値圏での底堅い推移が見込まれます。


・含み益
20190906J-REIT6.12決算投資法人含み益推移
20190906J-REIT6.12決算投資法人含み益推移2

 含み益は鑑定評価額-帳簿価格で算定しています。6.12月の投資法人も順調に含み益を積み上げている状況です。さくら総合リート投資法人が吸収合併される見込みであることからここでの開示も今回で終了の見込みです。2019年6月期は物件の売却も多かったのですが、とごも売却益を計上しているため含み益を利益積立金としてプールしている投資法人も増えました。MCUBS MidCity投資法人なんかは未だに含み損の物件もあるようですが、出来るだけ2019年12月期までに売却した方が良いと思いますが、2019年10月には消費税の増税もあり、資金負担が増えるため物件売却には多少なり影響がでることも考えられるのでそうなると更に長期間保有し続けるという選択も有りかと思います。

 短いスパンで物件を取得している日本リート投資法人、インヴィンシブル投資法人も取得したばかりの物件なのになぜか含み益が発生状況なのでいつ売却しても見込み上は利益がでるのでこうったところもJ-REITの安心材料に繋がっているのではないでしょうか。ただ、この含み益をさくら総合リート投資法人も持っているというところでさくら総合リートを吸収合併する見通しのスターアジア不動産投資法人については正ののれんが発生することになります。また、インヴィンシブル投資法人やいちごホテルリート投資法人のようなビジネスホテルを主力としている投資法人の場合は日韓関係悪化による外国人旅行者の影響を受けやすいのでそれによってDCF価格が減少し鑑定評価額(時価)が減少してしまうと含み益は小さくなります。


・稼働率
20190906J-REIT6.12決算投資法人稼働率
20190906J-REIT6.12決算投資法人稼働率2

 6・12月決算の投資法人は稼働率においては優秀で大きく稼働率が減少している投資法人は有りません。日本プライムリアルティ投資法人が下げていますが、早く次のテナントを確保して欲しいところですね。ホテルの場合は決算短信やプレスリリースでは客室稼働率を開示していますが、レジデンスやオフィスビルの稼働率とは計算根拠が異なるためここではオペレーターベースの稼働率にて開示しています。日本リート投資法人やインヴィンシブル投資法人も大量に物件を取得しているためもっと稼働率にバラつきが出ると思っていましたがポートフォリオ全体からすると影響は小さくなっています。また、日本リート投資法人は商業施設が中心なので稼働率が上昇すると分配金の上昇に直結しやすいので今後も期待したいですね。

 また、ジャパンエクセレント投資法人の場合は数値として表れにくものの既に取得している物件の持分を増やす形で外部成長は続けており、賃貸事業利益は拡大しておりこちらも今後が楽しみな銘柄です。総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると東京23区では20年以上転入者が増加しているのでレジデンスの稼働率は上昇しやすい環境が続いているといえます。しかし、実際J-REITのレジデンスの稼働率を見るとあまり上昇していないように感じます。これは転入が増えている世代に関係していると考えられます。東京23区の転入超過数は20~24歳が極めて多いことから所得が少なくJ-REITで運用しているような築浅で利便性に富んだマンションには入居出来ないということが原因として挙げられます。投資家としては投資法人にあまり安い値段で貸し付けて欲しく無いのですが長く空室が続いた物件については制限付きでも賃料や礼金等の割引きを行い若い世代の入居も受入るという方法も検討する価値は有るのではないのでしょうか。