2019年8月期決算のJ-REITの収益性について分析しました。

・NOI利回り
20191103-8月決算投資法人NOI推移
20191103-8月決算投資法人NOI推移2

 NOI利回りのNOIは賃貸事業収入から賃貸事業費用を差し引き、減価償却費をプラスすることで算出しています。8月決算の投資法人についてのNOI利回りについてですが、日本リテールファンド投資法人のNOI利回りが減少しています。リニューアル工事等の影響もありますが間接的に日韓関係悪化の影響も受けていると感じます。ですが商業施設は天候の影響も受けやすいこともあるためこれらの影響によりNOI利回りが減少しています。NOI自体を上昇させるための施策が必要となってきます。その点福岡リート投資法人は同じリテール系で福岡中心のアセットではありますがNOI利回りの減少は軽微です。そのためこちらの方が日韓関係悪化によるダメージが大きそうですが中国人旅行者の需要を上手く取り込めていることや旗艦物件のキャナルシティを始め元々ネームバリューというかその土地のシンボルとなっている物件が多いことからシー上手く集客できていると考えられます。

 前期に取得した物件のNOIが効いているオリックス不動産投資法人と森トラスト・ホテルリート投資法人を除き8月決算投資法人のNOI利回りは軒並み減少に転じており、テナントの賃料上昇・リーシングは苦戦している印象を受けます。また、多くの投資法人で修繕費や資本的支出利用したバリューアップ工事を行っているため修繕費により賃貸事業利益が減少している投資法人が多いということは付け加えておきます。2020年2月期にさらに減少している場合は各アセットのテナントが属する不動産以外の経済は下降しているということになるかと思います。


・当期純利益率
20191103-8月決算投資法人当期純利益率推移
20191103-8月決算投資法人当期純利益率推移2

 当期純利益率についてですが、8月期決算の投資法人も物件の売却を積極的に実施した投資法人が多かった印象です。好調に上昇しているのはタカラレーベン不動産投資法人ですが、TTS南青山ビル(準共有持分70%)の売却により売却益738百万円を計上しているための上昇です。ですが賃貸事業利益率は56.6%程度なので賃貸事業費用の管理は悪くないと感じます。また、ザイマックスリート投資法人も固都税がPLにインパクトしはじめたので前期に比べると減少していますが、それでも賃貸事業利益率は63%なので悪くはないです。金額的に固都税が全額インパクトしていないという疑いはありますが、このまま賃貸事業費用の管理が上手くいけばこれら2つの投資法人は外部成長が鈍化しても内部成長で利益を出していくことも可能だと考えられます。

 NOI利回りと当期純利益率ともバランスが良いのはGLP投資法人と三菱地所物流リート投資法人等、物流系J-REITです。何度も述べてはいることですが、物流施設はやはり少ないコストでアセットを運用できるというメリットがあります。また、屋根に太陽光パネルを設置し、発電した電気を電力会社に売電したり、その物流にて使用することで水道光熱費を削減するという方法を採ることができます。これによりサスティナビリティ施策のアピールになるので良いことずくめのアセットです。物流施設の開発ができるプレーヤーはオフィスビルやレジデンスのデベロッパーと比べるとまだまだ少ないので強気の賃料で賃貸できるという点が大きなメリットです。