2019年9月期決算のJ-REITの安全性について分析しました。

・有利子負債利子率
20191204J-REIT(3.9月決算)有利子負債利子率
20191204J-REIT(3.9月決算)有利子負債利子率2

 3月・9月決算投資法人の有利子負債利子率はケネディクス商業リート投資法人以外は減少しています。LTVも低下しているため有利子負債全体が圧縮されているということもあり利息負担は前期と比べると減少しているということになります。最近の財務戦略のトレンドとしてはサスティナビリティ活動と結びつけるグリーン融資やグリーンボンド債の発行などを導入している投資法人が多くなっています。

 ジャパンリアルエステイト投資法人はグリーンボンド債の発行を既に手をつけていますが3月・9月決算投資法人の場合はそんなに有利子負債の借換えを頻々に行うタイプの投資法人は無いのでサスティナビリティに無理に走る必要が無いという状況です。ケネディクス商業リート投資法人は外部成長に積極的であるためグリーン融資やグリーンボンド債を導入する可能性は高いと思います。結局導入したとしてもレンダーは支払利息や融資関連費用はキッチリと一般的な水準で請求してくるので実務者としては手間ばかりでコスト削減には結びつかないというのが実態なので投資家さんの分配金についての影響は全く無いんですよね。

 日本賃貸住宅投資法人のようなレジデンスが主体の投資法人についてはサスティナビリティ関連の資格が取得しづらいということもありグリーン融資やグリーンボンド債の導入は相性が悪いといえます。入居対象が個人になるため光熱費の削減や二酸化炭素排出量などについて測定することが難しく環境や社会的責任を押し付けることもできないので仮に資格を取得してもこれらの評価をバリューアップ工事程度では上げられないんですよね。


・LTV(有利子負債比率)
20191204J-REIT(3.9月決算)LTV推移
20191204J-REIT(3.9月決算)LTV推移2

 LTVは有利子負債÷総資産で計算しています。ジャパンリアルエステイト投資法人はLTV水準をどんどん引き下げている状況です。少額ではありますが融資関連費用と支払利息の削減も進んでいるためこの傾向について問題はありません。ケネディクス商業リート投資法人は借入れを利用した物件取得を頻々に行うということもありlTV水準は2017年9月は42.6%でしたが2019年9月には44.9%まで上昇しています。上昇しているとはいえLTV50%までにはまだ差があるので安全性については特段問題無いと思います。

 また、これはいつもの如くの話ですが森トラスト総合リート投資法人とグローバル・ワン不動産投資法人についてはデッドにおける動きが元々少ないということ(物件取得を積極的に行っていないため借換え用途以外での資金調達が少ない。)、またスポンサー自体の信用力が高いということもありLTVが高いにも関わらずレンダーからの評価は変わらないとう状態です。

 問題は日本賃貸住宅投資法人ですね。物件数も192棟と物件の数も多く、運用物件についても1物件当たりの投資金額を大きくすることが競争力を高めようと小規模のレジデンスを売却し中規模レジデンスを取得するという資産の入替えを行ってきました。運用戦略は全く問題無いと思っていますが、スポンサーが・・・。時々投資法人の投資口の所有割合を高めて連結してみたり、関連会社の大和PIパートナーズを通じていろんな企業に投資し失敗してみたりと迷走が際立っています。レンダーがこの大和証券というスポンサーの評価が変わってしまうのではないか?という点が気になります。