2019年11月29日にエスコンジャパンリート投資法人がスポンサー関連企業である中電不動産とウェアハウジングを利用した物件について優先交渉権を取得したと発表しました。
 ウェアハウジングとは資産運用会社が選んだ第三者所有の物件をスポンサー自らあるいはSPC等を利用して投資法人の資金調達の目途が立つまで「持っていてあげる」という制度です。この中電不動産㈱はスポンサーである中部電力㈱の子会社の不動産会社です。
 
優先交渉権の対象物件
 
 tonarie大和高田(持分1/2)、所在地:奈良県大和高田市
 tonarie栂・美木多(持分1/2)、所在地:大阪府堺市
 トライアル近江八幡店(底地)、所在地:滋賀県近江八幡市
 ドラッグユタカ向日上植野店(底地)、所在地:京都府向日市
 クスリのアオキ斑鳩店(底地)、所在地:奈良県生駒郡

 優先交渉権有効期間は2021年2月28日までです。

 中部電力㈱は東京電力㈱、関西電力㈱に続く大手電力会社です。インフラファンドのスポンサーになるのかと思いきや、J-REITのスポンサーとなっていました。もちろんメインスポンサーは㈱日本エスコンなのですが信用力という面で強力なのは日本エスコンよりもむしろこっち。

 中部電力㈱は電力会社ですがエネルギー業界は不動産以上に厳しい状況にさらされています。電力自由化により新電力と呼ばれる小売電気事業者とシェア争いを繰り広げています。元々は各エリアを十電力会社といわれる大手電力会社がすべて発電・送電・売電を行っていました。電力自由化によりシェアを奪われる立場であることや、十電力会社同士でのシェアの奪い合いも起きています。

※十電力会社(北海道電力㈱、東北電力㈱、東京電力㈱、北陸電力㈱、中部電力㈱、関西電力、中国電力㈱、四国電力㈱、九州電力㈱、沖縄電力㈱の総称)

 そんな中でも中部電力㈱は東京電力㈱と合弁で電力卸の会社を作ったり、競合他社である新電力会社と相対契約を締結したりと積極的に生き残り策を実行に移しています。そんな中でJ-REITに目をつけたのは上手いと思います。電力会社傘下の不動産会社は他にもありますが、もともとと発電所の管理であったり電気工事を行うことが目的で作られた会社ばかりなので不動産会社というよりも工事会社としての側面が大きいのです。

 そういった工事会社をファンドという新天地に目を向けさせたことが重要です。他の電力会社達はあくまで本業で必死ですからね。今からじっくりJ-REIT界隈で中電不動産㈱を育てたいのではないかと感じます。中電不動産㈱は拠点が長野県と静岡県のようなので実際、私も取引したことはありませんが上記の優先交渉権対象物件を見る限り香ばしい規模の香ばしい立地の物件なので現状は頼れるスポンサーとはいえません。今後、中部電力㈱が自身の発電所や施設を運用物件として提供してくれるのであればエスコンジャパンリート投資法人は大化けすると思うんですけどね。