2019年12月20日にヘルスケア&メディカル投資法人がインパクトレポートを発表をしました。医療・介護を取り巻く環境と今後のヘルスケア施設の取得の方針が示されています。J-REITに興味がない人にもぜひ読んで頂きたいと思います。

少子高齢化の現状
20191228少子高齢化の現状
 総務省「人口推計」によると、我が国の65歳以上の人口は2018年10月現在3,558万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は28.1%となっており世界で最も高齢化が進んでいます。総人口が減少し少子化が進む一方、65歳以上の人口が増加することにより高齢化率は上昇を続け、2036年に33.3%と国民の3人に1人が65歳以上となる社会が到来すると推計されています。特に75歳以上が占める割合は増加を続け、少子化による労働の担い手不足と高齢化による医療介護ニーズの増加は医療・介護業界に大きな影響を及ぼし始めています。また、高齢化及び少子化の進展により、我が国における社会保障給付費は大幅な増加が予測されており、大きな課題となっています。

少子高齢化から派生する問題
20191228少子高齢化から派生する問題2
 高齢化により、要介護認定者数も増加の一途と予想される上に、少子化の進展と家族構成の変化により、同一世帯の中で介護を担うことが、これまで以上に困難になることが予想されます。増加する介護ニーズに対応するため、介護の担い手確保とヘルスケア施設の供給促進が求められています。また、高齢化による死亡者数の増加とともに、医療機関以外の自宅や高齢者施設等で最期を迎える人の数が急速に増加すると見込まれています。今後、看取りの担い手として高齢者施設等への需要が拡大するとともに、医療機関による自宅や高齢者施設等での医療サービス(在宅医療)と医療・介護の関係機関の連携が求められています。  

ヘルスケア施設の整備・拡充への環境整備
20191228介護サービス量の推移
 上記のような課題に対し国や地方公共団体は医療・介護サービス需要の拡大に対応するため、ヘルスケア施設の整備・拡充が求められており、それに向けた政策が推進されています。また、厚生労働省の「病院の耐震改修状況調査」によれば、2018年における病院の耐震化率は74.5%にとどまっています。病院は、日常的に不特定多数の人々が利用し、災害時には地域の拠点ともなり得る施設であることから、耐震化への対応として建替え等の投資が急務となっています。国は2013年6月14日付「日本再興戦略~JAPAN is BACK~」の中で、高齢者等が安心して歩いて暮らせるまちづくりの一環として、「民間資金の活用を図るため、ヘルスケアリートの活用に向け、高齢者向け住宅等の取得・運用に関するガイドラインの整備」を行うとの方針を公表しました。この方針を受け、国土交通省は、2014年6月27日に「高齢者向け住宅等を対象とするヘルスケアリートの活用に係るガイドライン」、続いて2015年6月26日に「病院不動産を対象とするリートに係るガイドライン」を制定し、ヘルスケアリート活用に向けたガイドラインが整備されました。
 ヘルスケアリートの普及策として、金融庁、国土交通省、東京証券取引所、一般社団法人不動産証券化協会の共催による関連事業者を対象にしたセミナーが年数回開催され、官民を挙げた取組みが図られています。

 特にヘルスケア施設に関わりそうなところをピックアップして紹介しましたが、シニア系J-REITとしては少子高齢化は追い風なはずです。国や地方公共団体がヘルスケアリートの普及策として~、と上げていますがその効果は無いということが実態です。シニア家J-REITは3つ存在しましたが今後では生き残っていけそうなのははヘルスケア&メディカル投資法人のみです。ジャパンシニアリビング投資法はケネディクスレジデンシャル投資法人に吸収され、日本ヘルスケア投資法人は2020年4月には日本賃貸住宅投資法人に吸収される運命です。

 私が考えるシニア系J-REITの課題としては①利益超過分配金の配当割合が高く本当の利益のみの分配で投資家さんを集められないこと、②物件の取得が遅々として進まず外部成長が行われないこと。③基本的にテナント(オペレーター)の入替えがないため賃料が固定化してしまうため投資口価格も固定化しやすいということが挙げられます。ヘルスケア&メディカル投資法人は立ち上げ当初はインヴィンシブル投資法人から間接的に取得したボンセジュールシリーズということもありあまり期待はしていませんでしが、唯一のヘルスケア施設特化型になった限りは投資家さん達から評価されるようなJ-REITになって頂きたいと思っています。