2020年2月期決算のJ-REITのNAV倍率、含み益、稼働率の推移を見ていきます。

・NAV倍率
20200507J-REIT2・8月決算投資法人NAV倍率推移
20200507J-REIT2・8月決算投資法人NAV倍率推移2
 
 2020年2月期の株式マーケットは、コロナウイルスの感染拡大は懸念材料ながら、中国の景気刺激策への期待に加え、米雇用統計など良好な米経済指標や底堅い米企業業績を背景に、内外の株式市場が持ち直す中、J-REIT市場も月初こそ利益確定売りに押されたものの、その後は底堅く推移しました。長期金利がマイナス圏で推移する中、相対的に高い分配金利回りに着目した買いなどから、5日には東証REIT指数は2,200ポイント台を回復しました。月半ばにかけても買い優勢で推移し、東証REIT指数は約2か月半ぶりの水準まで上昇しました。新型ウイルスの感染拡大への警戒などから、長期金利がマイナス圏で推移する中、J-REITの分配金利回りは3%半ばと相対的に高い水準です。新型ウイルスの感染拡大への警戒が一段と高まった場合には、投資家のリスク回避姿勢が過度に強まり、売りに押されていたようです。内外の中央銀行が緩和姿勢を強めて景気を下支えするとの期待や、J-REITの分配金利回りに着目した買いなどが下支えする形になりました。
 NAV倍率は前期と比べると大きく減少しました。1倍以上となっていた投資法人はスポンサーが大企業であるところが多いという結果になりました。アセットタイプでは物流施設が主力の投資法人は減少幅が少なくなっています。感染拡大に収束のめどが立つまでは、ホテル関連のJ-REITを中心に投資口価格は不安定な動きになる可能性があり注意が必要です。


・含み益
20200507J-REIT2・8月決算投資法人含み益推移
20200507J-REIT2・8月決算投資法人含み益推移2

 含み益は鑑定評価額-帳簿価格で算定しています。期末の帳簿価額は取得時の帳簿価額から減価償却費を引くことで算定されます。2020年2月の段階でも含み益を持っている物件が多いので不動産マーケットは引き続き高止まっている状況です。実際の実務ベースでは売買の紹介件数は減少傾向にあります。どちらかというと個人の方の売買が減少しているかな?といったところです。それも売買自体が白紙となっている訳ではなく1~3ヶ月程度での延期を選択されているようです。法人の方は相変わらず紹介の引き合いは多いですね。ですがホテルは売れないと考えているのか仲介会社からのホテルの紹介は減りましたね。
 物件の含み益は売却しなければ現状は絵に書いた餅にすぎません。投資家さんの不安の1つとして物件が含み損を抱えしかも資産運用会社がその状態で売却を判断するのではないか?というところにあると思います。不動産等の時価を表す鑑定評価額はDCF価格に依存する部分が大きいためテナントの業績が下がれば賃料収入が減るとシミュレーションするものです。そのため鑑定評価額が下がると思いがちですが、DCF以外にも再調達原価や類似事例も影響を与えるため直ぐに大幅な下落とはなりません。また実際の売買も鑑定評価額を基準に売却価格が設定されることが大きいため含み益が直ぐに含み損に転じるという可能性は少ないです。


・稼働率
20200507J-REIT2・8月決算投資法人稼働率推移
20200507J-REIT2・8月決算投資法人稼働率推移2

 2月・8月投資法人の稼動率は概ね良好と言えます。森トラスト・ホテルリート投資法人はオペレーターへの賃貸を表しているため100%となっていますが、実態の客室稼働率は厳しい状況です。GWもお大きな売上増加となることは考え辛いためしばらくホテル系J-REITはお勧めできない状況です。コロナウイルスによる営業自粛中ですが割とアパホテルの名前を聞くことが多いと思いますが、アパホテル以外でも東横インを始め都内のビジネスホテルでは医療従事者の宿泊施設として役所から打診を受けるケースが少なくありません。特に投資法人の場合は所有者は投資法人ですが、運用しているのはオペレーターです。オペレーターとしてはどうせ空室になっているホテルならということで協力をしたくても所有している投資法人が協力を拒んでいるいう話を聞きました。割と私自身の周りでもコロナウイルス感染者を泊めると思っている方が多いようですが、そういっただけでなく病院で働く関係者の宿泊施設としての打診が多いです。ただ、森トラスト・ホテルリート投資法人の場合はリゾートホテルで規模が大きいためこういったところで貢献できる施設ではないんですよね。
 日本アコモデーションファンド投資法人や野村マスターファンド投資法人のようにレジデンスが多い投資法人については稼働率は安定していると思います。2-3月の繁忙期にしては変動が少ないように感じます。今回は転勤者や入学・入社による人の動きが例年より少ないと思います。