2020年5月期決算のJ-REITの安全性について分析しました。

・有利子負債利子率
2020801J-REIT(5月・11月決算)・有利子負債利子率推移
2020801J-REIT(5月・11月決算)・有利子負債利子率推移2

 5月・11月決算投資法人の有利子負債利子率の減少は前期と比べると減少しています。5月もレンダーのJ-REITに対する融資姿勢といった面では良好であることが解ります。ここ1~2年で格付取得~投資法人債の流れがスムーズに行われている投資法人が多くなってきたため財務戦略としては行き詰まりが見えてきたと思います。もう財務面でコストの削減は難しくなってきていると思います。最近のトレンドとしてはSMBCサスティナブル融資やグリーンボンド債の発行といったESG投資に関心がある企業や投資家が増えてきたこともあり今後もこの流れは続くと考えられます。
 反対に問題だと思われるのが変動金利→固定金利、固定金利→変動金利と時に利用される金利スワップ契約に代表されるヘッジに手を出すケースです。主に外資系レンダーはこの契約手数料で稼ごうとしている感が感じられるとことが有ります。個人的には変動金利か固定金利で初めから契約しておきマーケットの風向きが変わった時に締結できないものかと思っているのですが財務担当部署も直ぐに締結してしまいます。私もJ-REIT業界に十数年いますがヘッジしておいて良かったという経験は1度も無いんですよね。大体、どこの資産運用会社も銀行でドロップアウトした人間が財務担当役員で雇用されるケースが多くその人物が金利スワップ契約を推進するため資産運用会社では疑問を持たず締結してしまっていることが往々にして有ります。私はユナイテッド・アーバン投資法人のようにシンジケートローンでレンダーを一まとめにせずレンダー一行、一行と直接交渉するというようなことの方が財務の仕事だと思うんですけどね。
   

・LTV(有利子負債比率)
2020801J-REIT(5月・11月決算)・LTV推移
2020801J-REIT(5月・11月決算)・LTV推移2

 LTVは有利子負債÷総資産で計算しています。5月・11月決算のJ-REITでもLTVは低めの水準で推移しています。現状では東京都内のコロナウイルス感染者数が200人台で続いている中ではありますが、レンダー姿勢は変化していないと思われます。ただ、ホテルの取得するための融資についてはここ1-2年は厳しい状態が続いています。ですが不思議と不動産マーケットではホテルはそんなに取引金額が低下しているということも無く落ち着いています。
 上記の表を見ても一番高いアクティビア・プロパティーズ投資法人でも46%と低い水準です。資金調達余力はあると判断できる状況ですが、ホテルについてはいつ評価が変わるかは解りません。5月・11月決算のJ-REITでは勿論大江戸温泉リート投資法人が安定性のリスクが高いと言わざるを得ません。スポンサーがオペレーターであることからスポンサーの決算期の運用成績により賃料が決定され、2020年5月期はコロナウイルス感染症拡大に伴う大きな影響は無いということですが、実際客室稼働率が低下しているため影響はあると考えるべきだと思います。少なくとも確実に投資法人に賃料を払うスポンサーはダメージを負っている訳なので中長期に渡り投資家さんに分配金を支払うことが目的に投資法人という性格から大江戸温泉リート投資法人の安定性は欠けるということでは無いでしょうか。スポンサーである温泉物語が賃料減額を要求してきたりするとレンダーの姿勢は直ぐに手のひら返しを始めると思います。