2020年8月17日にフロンティア不動産投資法人の決算が発表されました。
分配金は当初の予想一口当たり分配金が10,600円のところ10,766円で着地しました。

変動賃料の減少は痛いがNOI利回りは5%以上を維持
20200821フロンティア不動産投資法人NAV倍率推移

 新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い、商業施設を取り巻く環境については、緊急事態宣言解除後は持ち直しの動きがみられるものの、消費者のマインドは冷え込み、小売販売額も前年を大きく下回りました。商品分野別では、食料品・日用品等は好調に推移したものの、緊急事態宣言を受けての休業や外出自粛等により、特に飲食・ファッション・サービスを中心に大きな打撃を受けました。
 このように商業施設の運営においては厳しい中でしたが3月上旬にスポンサーパイプラインを活用しTENJIN216、ララシャンスHIROSHIMA 迎賓館(底地)を新たに取得、また、増改築事業として工事の完了したブランチ博多パピヨンガーデンの建物を取得し内部成長を実現するなど、ポートフォリオの質の向上及び収益の安定性向上に努めました。

 既存の保有物件の賃貸の状況については、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う休業等により、特に売上状況の厳しい都心型商業施設の一部のテナントに対しては、賃料の支払猶予又は減免等の支援を行ったものの、大規模SCについては、長期固定のマスターリース契約により、変動賃料の減少といった限定的な影響にとどまりました。202年6月期末におけるポートフォリオ全体の賃貸状況については、信用力の高いテナントとの長期固定の賃貸借契約を中心とした安定的なポートフォリオを維持しており、稼働率は100.0%となっています。上記のような運用の結果、2020年6月期の実績として営業収益は10,603百万円、営業利益は5,770百万円、経常利益は5,500百万円、当期純利益は5,499百万円となりました。


コミットメントライン設定額20億円増加で安全性を強化

 財務の動きについてですが、フロンティア不動産投資法人は中長期にわたり安定的な分配金の配当を行うことを基本方針としており、2020年6月期においては物件の取得に合わせて、2020年3月に長期借入金の借入により総額6,000百万円の資金調達を行いました。借入においては調達先の拡大、調達手段の多様化、返済期限の分散、長期固定化を意識し、財務の安定性向上に努めました。その結果、2020年6月期末の借入金等の残高は、短期借入金1,000百万円、長期借入金105,900百万円及び投資法人債券11,000百万円の合計117,900百万円となっています。期中、投資口価格が著しく割安な水準で推移していると判断し、自己投資口の取得を実施、その全てについて消却を行うことにより、1口当たりの分配金水準の向上を図りました。なお、2020期において取得・消却した投資口の総数は8,232口(消却前の発行済投資口の総口数に対する割合1.59%)となります。
 また、投資法人は、資金調達の多様性・機動性を保持するため、2006年12月26日付でS&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱から、2009年6月30日付で㈱格付投資情報センター(R&I)から、2015年12月22日付で㈱日本格付研究所(JCR)から、それぞれ発行体格付を取得しています。2020年6月期末時点の取得格付は以下の通りです。
S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱(S&P)、 長期発行体格付:A+ 短期発行体格付:A-1 アウトルック:安定的 
㈱格付投資情報センター(R&I)、発行体格付:AA- 格付の方向性:安定的 
㈱日本格付研究所(JCR)、長期発行体格付:AA 格付の見通し:安定的 

 自己投資口取得の決断が早かったところが個人的には好印象です。もともと低いLTVで有利子負債÷総資産で37.9%なのでコミットメントライン設定額を増額しなくても十分安全性は高いと思っています。フロンティア不動産投資法人はリテール系J-REITの中でもかなり安定志向なのですが今後ますます守りに入りそうな気がしますね。