2020年7月期決算のJ-REITのNAV倍率、含み益、稼働率の推移を見ていきます。

・NAV倍率
20201006J-REIT(1・7月決算)・NAV倍率推移
20201006J-REIT(1・7月決算)・NAV倍率推移2
 
 2020年7月の株式マーケットですが上旬は分配金利回りの高さに着目した買いが一旦広がったものの、その後は富士通がオフィススペースを半減させると発表したことを受け、同様の動きが広がることへの警戒などから、売りに押されました。東京都の1日当たりの新型コロナウイルス新規感染者数が200人を超えるなど、新型コロナウイルス感染拡大も悪材料となりました。また、緊急事態宣言の再発令などもやや意識された状況でした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大収束後の分配金回復に対する期待などから買い戻しの動きも広がり、底堅く推移しました。8月の東京都心のオフィス空室率は上昇していますが依然として低水準であることからJ-REITの相対的に高い分配金利回りに着目した買いが進んでいくと思います。

 富士通といえば2020年10月1日に東証で起こったシステム障害ですよね。丸一日投資口の売買ができなく困惑した投資家さんも多かったのではないかと思います。日経クロステックの記事によると障害が発生したのは、高速取引システム「アローヘッド(arrowhead)」内にある、株価などの情報を配信する「相場報道システム」で、ネットワークの共有ディスク装置1号機のメモリー故障が発生した。予定では2号機の運用に切り替わるはずだったが、うまく切り替わりませんでした。その影響で、情報配信ゲートウェイというサーバーの配信処理、および取引所側の監視処理に異常が発生したということです。この基幹システム「アローヘッド」の設計・開発を手掛ける富士通です。個人的には富士通にはオフィススペース半減ではなくむしろJ-REITのオフィスビルに入居するという形で反省してほしいですね。

 NAV倍率については多くの投資法人で1倍を下回っています。しかしながら物流施設は大きく上昇しており、その存在感を見せつける状況となりました。前期よりは減少してるもののレジデンス系J-REITであるアドバンス・レジデンス投資法人、コンフォリア・レジデンシャル投資法人、ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人もレジデンスの安定感が好まれ1倍を上回る数値となっています。これらトップクラスのレジデンス系J-REITに存在感を消されがちなサムティ・レジデンシャル投資法人も元々の投資口価格の低さから買われたものと考えられます。


・含み益
20201006J-REIT(1・7月決算)・含み益推移
20201006J-REIT(1・7月決算)・含み益推移2

 含み益は鑑定評価額-帳簿価格で算定しています。2020年7月期もホテル系J-REIT中心に一部の投資法人において鑑定評価額が下落している物件が有ります。鑑定評価額は主に資産運用会社が将来どのように予算組しているかが大きく影響を与えます。(DCF法で算定する場合の基礎となるため)そのため鑑定評価額は前期と比べ大きく変動しない場合が多いのです。しかし、監査法人は期末時点の時価を要求するため鑑定評価額を下げるように資産運用会社に要求してきます。営業自粛しているし客室稼働率は減少しているのに時価が変わらないなんておかしいという理屈です。そのため将来的には客室稼働率を上げていこうという上向きの予算を組んでいるのに鑑定評価額を下げるということはネガティブに予算組みしなければならないため実際に将来の業績予想として開示している予算と乖離が生じることになるのでこの監査法人のやり方はどうなのか?と個人的には思いますね。特にいちごホテルリート投資法人はコンフォートホテル岡山以外全ての物件で鑑定評価額が引き下げられています。
 今後はGotoトラベルキャンペーンの影響で強気で予算組みすることになるのでホテルの鑑定評価額の下落は止まるのではないかと考えられます。

いちごホテルリート投資法人の鑑定評価額のうち下落率が高いもの
・スマイルホテル京都四条:3,860百万円→3,590百万円(▲270百万円)
・チサンイン大阪ほんまち:1,850百万円→1,510百万円(▲340百万円)
・ネストホテル大阪心斎橋:6,990百万円→6,150百万円(▲840百万円)
・コンフォートホテル中部国際空港:5,880百万円→5,740百万円(▲140百万円)


・稼働率
20201006J-REIT(1・7月決算)・稼働率推移
20201006J-REIT(1・7月決算)・稼働率推移2

 1月・7月投資法人の稼動率は何故か上昇している投資法人が多いですが実際には若干減少傾向にあると考えられます。これはコロナウイルスによるものと元々の閑散期であることも理由として考えられます。特に減少しているのはサムティ・レジデンシャル投資法人やスターアジア不動産投資法人といった地方の物件の割合が多い投資法人に見られますがスターアジア不動産投資法人を見ると東京都内のレジデンスの稼働率も大きく減少しています。スターアジア不動産投資法人の物件ではアーバンパーク護国寺85%、アーバンパーク難波90.1%、アーバンパーク高円寺91.7%といった具合です。護国寺、高円寺と特別利便性が高い立地ではないため学生の利用入居者が多い土地柄でもあるのでリモートでも授業できるとなればもう少し家賃の安いところに引っ越すということも考えられなくないのでこの点については継続的にモニタリングしていく必要があると思います。サムティ・レジデンシャル投資法人の稼働率のばらつきはかなり大きく80%台の物件も多くなっています。具体的にはS-FORT葵一丁目85.2%、S-FORT葵82.1%、S-RESIDENCE宮の森86.4%、S-FORT桜山84.7%となっています。この他にも80%台の物件がいくつかあるため早急に稼働率の改善が必要ではないでしょうか。

 総務省が2020年10月2日発表した8月の労働力調査では8月の完全失業率(季節調整値)は3.0%となっています。完全失業率は2カ月連続で悪化しており、3%台は2017年5月(3.1%)以来。近年は人手不足を背景に2%台の低水準で推移していました。悪化した理由は新型コロナウイルス感染症の感染拡大による景気低迷としているためこのあたりは特に地方物件で顕著に現れていると感じています。ホテルの客室稼働率については10月以降はGotoキャンペーンによる影響と入国緩和の影響で改善してくると推察されます。ホテルはこれがけん引することで鑑定評価額も上昇していくものと考えています。