少し前になりますが2020年10月29日にジャパン・ホテル・リート投資法人が運用中のホテルアセント福岡について、隣地の底地の取得と信託受益権の譲渡を行いました。

 敷地をまたいで物件が建設されているためか非常に実態が分かり辛くなっています。借地に関し、隣地所有者は、物件の旧所有者との間で定期借地権設定契約を締結した際に、旧所有者が隣地所有者に差し入れた保証金について、現借地人であるSMTBに対して、保証金返還債務不存在確認の訴訟を提起していましたが、当該訴えは第一審において棄却されました。つづく控訴審において和解に向けた協議を行ってきたところ、このたび、隣地所有者は、当該保証金返還債務の存在を認めたうえで、借地の底地と本貸地信託受益権を交換することに合意し、和解が成立するに至りました。

20201114ホテルアセント福岡

【写真:ジャパン・ホテル・リート投資法人HPより】

 これは隣地所有者が悪いと思います。第一審において棄却されたということは差入保証金は賃貸借契約書ないし売買契約書に差入保証金について明示されていたのではないかと思われます。敷金の償却について条件が有ったか、もともと建設協力金として差し入れられたものという可能性もあります。これは個人的な推察ですが差入保証金見合いの金額はどこかで使ってしまったんでしょうね。

 こういった隣地との問題は不動産業界では度々起こります。自分はしっかり売買契約書や賃貸借契約書を理解していても旧所有者とその隣地所有者、もしくはテナントとの契約や覚書が後から出てくるケースは非常に多いです。もちろん、J-REITの場合は物件取得時にER会社を利用し物件のデューデリジェンス(DD)は行いますが、DDは建築基準法や消防法といった法律面から物件のリスクを見るものであるため、旧所有者の差し入れた敷金を見るわけでは有りません。

 今回はジャパン・ホテル・リート投資法人よりもホテルアセント福岡の旧所有者の間で片づける問題だと思います。少なくとも、売買契約書にて差入保証金は旧所有者からジャパン・ホテル・リート投資法人に引き継がれているはずなので旧所有者が隣地所有者との間で整理しておくべきことがらではなかったかと思います。