2020年9月期決算のJ-REITの安全性について分析しました。

・有利子負債利子率
20201202J-REIT(3・9月決算)有利子負債利子率推移
20201202J-REIT(3・9月決算)有利子負債利子率推移2

 3月・9月決算投資法人の有利子負債利子率も前期と比べると減少しています。森トラスト総合リート投資法人は特に減少率が大きいです。森トラスト総合リート投資法人は物件の運用については取得した物件を長く運用していく安定性重視のスタイルですが、財務の方は短期借入金を利用している点が特徴です。短期借入金の方が当然長期借入金よりも金利が低くなるのですが、変動金利で借入れていくことでその時点のレンダーの投資法人に対する姿勢等をウォッチする狙いがあるのではないかと考えられます。ケネディクス商業リート投資法人は3月・9月決算投資法人の中で唯一のリテール系J-REITですがこちらも有利子負債利子率は引き続き減少傾向にあるため特に問題無さそうです。こちらは金利スワップ契約を締結しているので、今は若干損をしている状況なんですけどね。まあ現状は変動金利を固定化しているので固定金利で借りたときに同様の効果なので締結時の手数料が削減できるくらいのレベルなので分配金にはほとんど影響しないです。
 大和証券リビング投資法人は合併時に増資したこともあり、LTVも下がり金利負担も減少しました。合併により引き継いだ有利子負債については特に条件も変わっていないようなのですが、相変わらずレンダーのヘルスケア施設に対する評価は厳しいものがあります。これはレンダーだけでなく投資家さんにもこの傾向があるのではないかと思います。ESG投資という言葉もありますが、ESGに興味がある投資家さんは環境対応には視点が向くものの社会貢献についてはあまり響いていない印象です。


・LTV(有利子負債比率)
20201202J-REIT(3・9月決算)LTV推移
20201202J-REIT(3・9月決算)LTV推移2

 3月・9月決算の投資法人もLTV水準は安定的に推移しています。3月・9月決算の投資法人は数は少ないですが優秀な投資法人が多いのでLTVが多少高くてもスポンサーの信用力の高さにより、即融資を受けられないということにはならないでしょう。皆さんが気になるであろう大和証券リビング投資法人ですが、レンダーポートフォリオとしては日本賃貸住宅投資法人時代と変わらが、三菱UFJ銀行(約26.9%)がメインバンクとして形態を採っています。次いで三井住友銀行(約15.2%)、りそな銀行(約9.7%)となっています。みずほ銀行からの借入れもあるのですが新生銀行、あおぞら銀行に次いでの6番手となっています。今後はもっとみずほ銀行の比率を上げつつ、あおぞら銀行や新生銀行の比率を下げていって欲しいところですね。投資法人として新生銀行と付き合うメリットは業績が良いときに借りた場合金利等の経済条件は圧倒的に安いという点とヘルスケア施設に対しての融資も積極的に行っていたところでした。2020年12月現在において、ヘルスケア施設に対して積極的でなくなった新生銀行にはあまり価値は無いと思います。というかむしろすぐ逃げる可能性№1のあおぞら銀行と№2の新生銀行に高いシェアを与えるのは危険です。また、三菱UFJグループの効率性の問題なのか、隠し玉として持っているのか変わりませんが三菱UFJ信託銀行からの借入れが無いのでみずほ銀行ではなく三菱UFJ信託銀行から借入れても良いと思います。