災害損失とは

 災害損失(さいがいそんしつ)とは、地震・火災・風水害・盗難などの災害による建物などの有形固定資産や棚卸資産の損失を処理するための費用勘定をいう。災害による直接の資産の損失額のほかに、その後片付けなど除去作業・事後処理に要した費用も含みます。

災害損失の範囲

・有形固定資産、棚卸資産の滅失損
・災害により損壊した資産の点検費用、撤去費用
・被災資産の原状回復費用、価値の減少を防止するための費用
・災害による工場閉鎖に伴う工場移転費用
・災害による操業休止期間中の固定費
・被災した代理店、特約店等の取引先や関係会社に対する見舞金、復旧支援費用
・災害を受けた取引先に対する売掛金の免除損
・被災した従業員、役員に関する見舞金、宿泊代等の復旧支援費用
・土砂その他の障害物の除去に要する費用その他これらに類する費用
 
 災害により被害を受けた資産を引き続き事業の用に供する場合に、法人税の所得の金額の計算上、損金の額に算入されるものとしては、資産の価値が減少したことによる評価損や原状回復のための修繕費用等があります。
 資産の価値が減少したことによる評価損は、災害のあった日を含む事業年度「被災事業年度」 で計上できますが、原状回復のための修繕費用等は、法人税法上の取扱いとしては、修繕等を行った事業年度で損金の額に算入することが原則となっています。
 しかし、今回の災害は地域的にも甚大であり、災害により被害を受けた資産に係る修繕費用等の発生は確実であるものの、早期に修繕等が完了しないといった事情もあることから、その結果、決算期によっては、資産につき修繕等を余儀なくされることとなった損失の発生した被災事業年度と実際に修繕費用等を支出した事業年度とが乖離することがあります。
 ここで問題になるのは税務の面ですが、法人税法上の取扱いとして、災害により被害を受けた棚卸資産及び固定資産の修繕等のために要する費用で、災害のあった日から1年以内に支出すると見込まれるものとして適正に見積もることができるものについては、災害損失特別勘定に繰り入れて、被災事業年度の損金の額に算入することができるとしています。


特別損失での表示

 災害損失は特別損失に計上されます。投資法人は一般的に兼業しておらず営業外費用に表示することもできますが、特別損失に計上することによりあくまでも突発的な損失であるため賃貸事損益では無いと考えていると思われます。後は投資家に対するインパクトとして特別損失であればさらっと流してくれるだろうというAM会社の気持ちがあると思われます。

 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則第95条の3では、特別損失に属する損失は、固定資産売却損、減損損失、災害による損失その他の項目の区分に従い、当該損失を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。ただし、各損失のうち、その金額が特別損失の総額の百分の十以下のもので一括して表示することが適当であると認められるものについては、当該損失を一括して示す名称を付した科目をもって掲記することができる。とされています。

 東日本大震災でも熊本地震においても国税庁から税制上の緩和などが行われます。投資法人の場合の会計処理は税務の基準に合わせた形で処理される場合が一般的ですので、大きな災害に襲われた場合は物件の毀損も大きなダメージですが、その復旧に係るコストをAM会社がどの程度なのか決算説明会などでしっかり確認しておく必要があります。