上場しているJ-REIT、インフラファンドの損益計算書を見みると「支払利息」という科目の記載が有ると思います。支払利息がなぜ毎期表示されているのかを解説していきたいと思います。

 投資法人の資金調達手法は大きく分けて2つ有ります。1つは公募増資(POまたはIPO)を利用し投資家から資金を集めるタイプ。もう1つはレンダー(メガバンク等の都市銀行や信託銀行、保険会社等)から資金を借りるタイプの2つです。J-REIT、インフラファンドもデット(負債)による資金調達によりレバレッジを利かせて物件を取得し分配金を投資家に分配する仕組みなので上場以来、借入金や投資法人債無い投資法人債は有りません。つまり投資法人は借入金や投資法人債での資金調達とは切っても切れない関係という訳です。
 
 それでは損益計算書に計上されている支払利息の中身ですが、支払利息は主にレンダーから資金調達した際の支払利息が計上されることになります。支払利息は金利に基づいて計算されますが、金利は基準金利とスプレッドに分けられます。基準金利はTibor、Liborで表記されており、よく月末に「金利決定のお知らせ」という表題でプレスリリースがされているのでご存知の方も多いと思います。

 よく、投資家の人達が「金利は下がるのか」という質問をされる方がいらっしゃいますがその質問は正確には正しく有りません。金利は相場が決定するのでその投資法人の利益や物件の質では金利が増減することは有りません。「金利が下がる」という意味はスプレッドが下がるということです。スプレッドはレンダーから見た投資法人のリスクなので物件の価値が向上したり、投資法人の利益が上昇したりする場合はこのスプレッドが減少する可能性は大いにあり得ます。

 リーマンショックの際に支払利息が増加した投資法人を知っている投資家さんも多いと思います。このレンダーから投資法人に対しての信用リスクの現れであるこのスプレッドは物件の良し悪しに限らず、「スポンサーの体力にも大きく左右される」ということにも注意が必要です。担保付のノンリコースローンでも、無担保ローンでも関係有りません。J-REIT関係の書籍を読むと「ノンリコースローンで借りていれば、ローンの返済が出来なくても担保となっている物件をレンダーに差し出せば良い。」という書き方をしている書籍が有りますが、上場しているJ-REIT、インフラファンドでこれをもし行えば、2度とレンダーからの資金調達を行えないと解釈した方が良いです。たとえ投資家さんを守る目的であったとしてもレンダーにとって貸したお金を返さなかったということは大きな罪以外の何者でも無いからです。そのため、リーマンショック時でもどの投資法人も物件をレンダーに渡してローンを返済した投資法人は無かったのです。

 最近では投資法人債の発行を行っている投資法人も多く存在します。投資法人債は一般企業における社債に相当します。私募ファンドの場合は「特定社債」という文言で会計処理されます。投資法人債の発行が増えている理由は資金調達先の多様化というメリットが有ります。その他に、社債を発行する場合に格付の取得が必要なように投資法人債の発行も格付機関から格付を取得することが必要で。つまり投資法人債を発行するということは「この投資法人は安全ですよ」ということをアピールできるというメリットも有る訳です。この投資法人債に対する利息は支払利息とは別に「投資法人債利息」という科目で損益計算書に計上されています。