米国REIT市場の状況
20180113米国REIT

 12月上旬は、11月のISM非製造業景況感指数が 市場予想を下回ったことなどが悪材料となり下落しました。しかし、中旬にかけては、11月の雇用統計が良好な内容となったことなどを受けて、景気拡大が不動産需要の増加に繋がるとの見方から、REITの事業環境の改善期待が高まり、反発する展開となりました。その後は、米上下両院で大型減税を含む税制改革法案が可決され、税制改革の実現による財政悪化への警戒感から長期金利が上昇しました。これを受けて、REITの資金調達環境の悪化懸念が強まり、反落する展開となりました。月末にかけては、大手カード会社が年末商戦の小売売上高が好調であったと発表したことなどから、小売り系REITの事業環境を巡る不透明感が後退し、持ち直す動きとなりました。

 米国REIT市場は、資金調達環境への懸念が後退すると見込まれることに加え、業界再編への期待が相場を下支えする要因となり、下値を固める展開になると予想できます。 物価の停滞が続いており、金融当局の利上げペースは緩やかになると思われます。また、相対的に利回り水準が高い米国債への投資需要が見込まれることから、長期金利の急上昇によるREITの資金調達環境の悪化に対する警戒感は徐々に後退すると考えられます。商業用不動産市場では、減税による景気の押し上げ効果が不動産需要に好影響を与えるとの期待が高まると思われます。また、資産運用会社などが、割安な水準にあると判断した小売り系REITに買収提案を行う動きが活発化しています。今後は小売り系REITを中心に業界再編期待が高まると考えます。


欧州REIT市場の状況
20180113欧州REIT

 欧州REIT市場は、英国が欧州連合(EU) からの離脱条件で譲歩案を提示したことなどを受けて、離脱協議の進展期待が高まり、上旬は堅調に推移しました。中旬にかけては、イタリアの総選挙が2018年3月に実施されるとの報道から、政治的な混乱が続く可能性が懸念され、上値の重い展開となりました。その後は、欧州中央銀行(ECB)理事会で経済成 長見通しが引き上げられたことや、ポルトガルの格付けが引き上げられたことなどから、投資環境が改善するとの見方が拡がり上昇しました。下旬以降は、スペインのカタルーニャ自治州の議会選挙で独立賛成派が勝利したことを受けて、政治不安が強まる一方、ユーロ圏の12月の消費者信頼感指数が市場予想を上回ったことが好材料となるなど、方向感に欠ける展開となりました。

 欧州REIT市場は、ユーロ圏の良好な経 済動向や英国のEU離脱交渉の進展期待がREITの事業環境に好影響を与えると見込まれることから、堅調な展開になると予想されます。ユーロ圏では、スペインは政治リスクが残るものの、景気回復を受けて不動産賃料が底堅く推移していることが好材料になると思われます。また、ドイツは好調な経済情勢を背景に堅調な不動産需要が続いていることに加え、フランスもオフィスや商業施設に対する需要の回復が継続すると見込まれることから、REITの業績は堅調に推移すると考えられます。英国では、EUと離脱条件で合意したことから、無秩序なEU離脱による経済や不動産市場に及ぼす悪影響に対する過度な警戒感は後退すると見込まれ、相場を下支えする要因になると思われます。


豪州REIT市場の状況
20180113豪州REIT

 海外のREITが商業施設に投資する大手REITに買収提案を行ったことなどを受けて、REITの業界再編期待が高まり、中旬にかけて、上値を試す展開となりました。また、産業施設に投資する大手REITが事業は順調に進捗していると発表したことなども好材料となりました。しかしその後は、11月の雇用統計が堅調な内容となったことなどから、利上げ観測が浮上して投資家心理が悪化し、反落する展開となりました。下旬以降も、豪中央銀行(RBA)が、昨年12月に開催した理事会の議事要旨を公表し、2018年の景気加速に自信を深めている様子が示されたことなどを受けて、長期金利が上昇したことが悪材料となり、軟調な展開でした。

 オーストラリアREIT市場は、REITの良好な資金調達環境や安定的な業績推移が相場を下支えする要因となり、底堅い展開になると予想されます。低インフレが続いていることに加え、住宅価格の高騰に沈静化の兆しが出てきたことから、RBAは低金利政策を維持すると見込まれ、REITの資金調達環境は安定的に推移すると考えられます。オフィス市場において、パースやブリスベンは、資源価格の回復を背景に資源関連企業の需要が持ち直しつつあり、低迷していた賃料の底打ち期待が高まると思われます。また、シドニーやメルボルンは、景気拡大を受けた堅調な需要に加え、インフラ整備などで古いオフィスビルを取り壊す動きが続いていることから、良好な需給環境が見込まれ、REITの業績は底堅く推移すると予想されます。


アジアREIT市場の状況
20180113アジアREIT

 シンガポールでは、11月の製造業購買担当者指数(PMI)や輸出額(石油を除く)がともに市場予想を上回ったことなどを受けて、景気拡大が不動産需要の増加に繋がるとの見方が拡がり、中旬にかけて上昇する展開となりました。下旬以降も、大手証券会社が商業施設に投資するREITに強気の見方を示したことなどが好材料となり、底堅い展開となりました。香港では、上旬は10月の小売売上高が市場予想を下回ったことなどから、商業施設に投資するREITの事業環境を巡る不透明感が強まり、上値の重い展開でした。中旬以降は、7-9月期の鉱工業生産が底堅い内容となったことや、世界銀行が2017年の中国の経済成長率予想を引き上げたことなどを受けて、投資家心理が改善し、堅調な展開となりました。

 アジアREIT市場では、シンガポールREITは、業績改善期待が高まると見込まれることから、堅調な展開が続くと予想されます。景気拡大や企業業績の回復を背景にオフィス拡張や新規出店の動きがでてきたことから、不動産賃貸需要の回復が見込まれます。事業環境の好転により、REITが保有する物件では、稼働率の改善などによる収益回復期待が高まると考えられます。香港REITでは、業績拡大が続くと見込まれ、底堅い展開が続くと予想されます。オフィス市場では、中国本土系金融機関を中心に香港オフィスを拡張する動きが拡がっており、堅調な需要が見込まれる一方で、ビジネス中心地では供給量の少ない状況が続いており、良好な需給環境を背景に賃料の上昇基調が続き、REITの業績は堅調に推移すると考える。