三井トラスト基礎研究所より2017年12月末時点の市場規模が発表されました。2017年6月末時点から約2,100億円増加し、国内不動産私募ファンドの市場規模は、微増ながら拡大基調が継続しているようで、2017年12月末時点での不動産私募ファンドの市場規模を、運用資産額ベースで16.0兆円と推計しています(グローバルファンドによる国内運用資産額を含む)。

 運用資産額が減少したとする運用会社数を増加したとする運用会社数が上回り、全体として前回推計結果から約1.3%の増加となりました。私募REITの資産規模が拡大している一方で、国内不動産私募ファンドにおける資産規模の縮小傾向が見られてます。これは単に期間の定めるある特定目的会社スキームよりも投資法人スキームの方が使い勝手が良いためAM会社都合により増加しているということが大きいと考えられます。
20180316私募ファンドの市場規模(2017年12月末時点)

【出典:三井トラスト基礎研究所私募ファンドとJ-REITの市場規模推移】

 デット資金調達環境は良好な状態が継続しており、エクイティ投資家の投資意欲は高い状態で継続していると考える運用会社が多いものとみられています。一方で、更なるデット資金の調達環境の緩和、エクイティ投資家の投資意欲の増大は見込みづらい状況と思えますが、中国を始めとする海外投資家の需要は大きいので利回り次第という状況だと思います。

 オープンエンド型私募ファンド(いわゆる私募REIT)への取り組み状況に関する調査では、16社が既に運用を開始していると回答しました。また、運用開始に向けて準備をしていると回答した運用会社も数社あり、オープンエンド型私募ファンドの組成に一巡感が見られるものの、今後若干増える可能性があります。 今後のオープンエンド型私募ファンド市場の発展に必要な内容についての調査では、「トラックレコードの蓄積」との回答数が最多となりました。

 毎回このアンケートにトラックレコードの蓄積と回答しているAM会社が多いようですが、要するに「特に展望が無い」ためとりあえずトラックレコードの蓄積と回答しているのだと思います。私募ファンドには外部投資家が存在するものと自社の傘下の投資法人に売却するためのウェアハウジング機能として存在している私募ファンドもあるため後者の場合は目的がトラックレコードの蓄積となることは必然と言えます。

 個人的には私募ファンドの市場規模拡大のためにはクラウドファンディングと併用し個人が投資できる私募ファンドを組成することが必要だと思います。例えば遵法制に問題が有り信託できなかった物件だが安全性は高く利回り的にも申し分無い物件は多数存在します。このような物件を高利回りで配当できるスキームを構築することができれば個人投資家からの投資も期待できると思います。

 機関投資家や一般的な法人投資家の場合はCSRやサスティナビリティを利用し、私募ファンドに投資することで環境保全や社会貢献を行えるようにすることで一定のニーズは有ると考えます。ここら辺は「不動産を売買する」か、「不動産を管理する」かしか頭に無い不動産業界の人間には難しいかもしれません(私もその一人ですが)。