上場投資法人は、投資家に経営内容を伝えるために財務情報を公開します。このとき執行役は、正しい情報を説明する責任(アカウンタビリティ)を負っていますが、自ら作った情報の正しさを自らが証明することはできません。
 そこで投資法人は、独立した第三者に証明を依頼します。この独立した第三者が公認会計士であり、公認会計士が判断するために行う検証を「監査」です。監査の結果は、「監査報告書」として投資法人に提出されます。
 公認会計士監査は、その内容を検証して、「適正」か「不適正」かを判断した結果を報告します。金融商品取引法では、すべての上場投資法人に公認会計士監査を義務付けています。
 J-REIT、インフラファンドも上場しています。そのため有価証券報告書は監査法人の監査を受けています。また、投信法に基づいて作成される資産運用報告書についても監査法人の監査が必要です。この監査報酬も損益計算書の販売費及び一般管理費に記載に表記されています。
 また、投資法人は投資信託及び投資法人に関する法律でも縛られる法人です。こちらでも計算書類及び附属明細書については会計監査人の監査が必要になります。
 金商法に基づいて作成される有価証券報告書と投信法に基づいて作成される資産運用報告書という2つの書類について監査を受けなければならないということです。

投資法人の監査の実態

 投資法人の場合はその会計事務を一般事務受託者である信託銀行や会計事務所に委託しています。また、資産の運用は資産運用会社(AM会社)に委託しているため監査法人との折衝AM会社が行うことになります。監査法人は基本的にAM会社が監査を行い必要があれば信託銀行や会計事務所に出向き監査やヒアリングを行います。
 監査で注目する点はやはり「減損会計」です。決算期をまたいで物件を売却する場合でその売却額が帳簿価額を下回る(売却損が発生する)場合は要注意です。売却の意思決定をAM会社が監査報告書を受領前に決断してしまった場合はその売却を決断した期に減損損失という形で損益計算書の特別損失に計上されます。


特定資産価格調査の費用負担

 資産運用会社は、運用の指図を行う投資信託財産について、指定資産(投信法施行規則第22条第1項)以外の特定資産の取得または譲渡等が行われたときは、価格調査を行う必要があります(投信法第11条第1項)。
 指定資産の場合には、金融商品取引所に上場されている有価証券や金銭債権のうち預金等の性質に近いものなど、客観的な価格評価が容易な資産であるといえますが、指定資産以外の特定資産の取引においては、当事者の恣意が働く可能性もあるからです。
 調査する資産が不動産であるときは、不動産鑑定士による鑑定評価を踏まえて調査しなければなりません。ただし、2012年4月施行の改正投資信託法により、不動産の取得または譲渡が行われた際の鑑定評価および第三者による価格調査の二重の義務付けは廃止され、第三者による鑑定評価義務に一本化されました。価格調査は、投資信託委託会社、利害関係人等、受託会社および受託会社の利害関係人等以外の以下の者が行います(投信法施行令第18条)。
 これは資産運用会社が負担するケースと投資法人が負担するケースの2つがあります。どちらが負担するかについては「投資法人と運用会社の費用負担の覚書」を投資法人と運用会社間で締結します。財務諸表上は投資法人が負担することになった場合は会計監査報酬に含めるかその他の費用に含めて表示されます。