資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令または契約で要求される法律上の義務およびそれに準ずるものと定義されます(会計基準3(1))具体的には投資法人は不動産のオーナーの立場なので、アスベスト除去費用やPCB除去費用が該当します。

勝手に簿価が積みあがる資産除去債務

(1) 有形固定資産の範囲(会計基準23)

 有形固定資産には、財務諸表等規則において有形固定資産に区分される資産のほか、それに準ずる有形の資産も含まれます。このため、建設仮勘定やリース資産のほか、財務諸表等規則において「投資その他の資産」に分類されている投資不動産などについても、資産除去債務が存在している場合には、資産除去債務の対象となることに留意する必要があります。

(2) 有形固定資産の除去と修繕

 有形固定資産の「除去」とは、有形固定資産を用役提供から除外すること(一時的に除外する場合を除く)をいいます(会計基準24)。除去の具体的な態様としては、売却、廃棄、リサイクルその他の方法による処分等が含まれますが、転用や用途変更は含まれません。また、当該有形固定資産が遊休状態になる場合は除去に該当しないこととされます。
 資産除去債務を有形固定資産の除去にかかわるものと定義していることから、有形固定資産の使用期間中に実施する環境修復や修繕は対象とはなりません。

(3)「通常の使用」とは

 通常の使用とは、有形固定資産を意図した目的のために正常に稼働させることをいい(会計基準26)、有形固定資産を除去する義務が、不適切な操業等の異常な原因によって発生した場合には、資産除去債務として使用期間にわたって費用配分すべきものではなく、引当金の計上や「固定資産の減損に係る会計基準」の適用対象となります。
 なお、土地の汚染除去の義務が通常の使用によって生じた場合で、それが当該土地に建てられている建物や構築物等の資産除去債務と考えられるときには、資産除去債務の会計基準の対象となります。

(4)「法律上の義務に準ずるもの」とは

 この場合の法律上の義務およびそれに準ずるものには、有形固定資産を除去する義務のほか、有形固定資産の除去そのものは義務でなくとも、有形固定資産を除去する際に当該有形固定資産に使用されている有害物質等を法律等の要求による特別の方法で除去するという義務も含まれます。
 法律上の義務に準ずるものとは、債務の履行を免れることがほぼ不可能な義務を指し、法令または契約で要求される法律上の義務とほぼ同等の不可避的な義務が該当します(会計基準28)。具体的には、法律上の解釈により当事者間での精算が要請される債務に加え、過去の判例や行政当局の通達等のうち、法律上の義務とほぼ同等の不可避的な支出が義務付けられるものが該当すると考えられます。従って、有形固定資産の除去が企業の自発的な計画のみによって行われる場合は、法律上の義務に準ずるものには該当しないと考えられます。

資産除去債務の計上基準

(1) 資産除去債務の負債計上

 資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって発生したときに負債として計上します。資産除去債務の発生時に、当該債務の金額を合理的に見積もることができない場合には、これを計上せず、当該債務額を合理的に見積もることができるようになった時点で負債として計上します(会計基準5)。
 資産除去債務を合理的に見積もることができない場合とは、決算日現在入手可能なすべての証拠を勘案し、最善の見積もりを行ってもなお、合理的に金額を算定できない場合をいいます(適用指針2)。また、資産除去債務の履行時期を予測することや、将来の最終的な除去費用を見積もることが困難であるため、合理的に資産除去債務を算定できない場合もありますが、このような場合も、当該債務の金額を合理的に見積もることができない場合に該当します(会計基準35)。

(2) 資産除去債務の算定

 資産除去債務は、それが発生したときに有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積もり、割引後の金額(割引価値)で算定します。

 ① 割引前の将来キャッシュ・フローの算定

 有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローの見積もりは、合理的で説明可能な仮定および予測に基づく自己の支出見積もりにより算定します(会計基準6(1))。将来キャッシュ・フローには、有形固定資産の除去に係る作業のために直接要する支出のほか、処分に至るまでの支出(例えば、保管や管理のための支出)も含まれますが、法人税等の影響額は含まれないとされます(適用指針4)。具体的には、次の情報を基礎として、割引前の将来キャッシュ・フローを見積もることとなります(適用指針3)。
 (ア)対象となる有形固定資産の除去に必要な平均的な処理作業に対する価格の見積もり
 (イ)対象となる有形固定資産を取得した際に、取引価額から控除された当該資産に係る除去費用の算定の基礎となった数値
 (ウ)過去において類似の資産について発生した除去費用の実績
 (エ)当該有形固定資産への投資の意思決定を行う際に見積もられた除去費用
 (オ)有形固定資産の除去に係る用役(除去サービス)を行う業者など第三者からの情報
 次に、(ア)から(オ)により見積もられた金額について、インフレ率や見積値から乖離(かいり)するリスクを勘案します。また、合理的で説明可能な仮定および予測に基づき、技術革新などによる影響額を見積もることができる場合には、これを反映させることとなります。
 有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローの見積もりは、生起する可能性の最も高い単一の金額または生起し得る複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの発生確率で加重平均した金額として算定されます。

 ② 無リスクの割引率

 割引率は、将来キャッシュ・フローが発生すると予想される時点までの期間に対応する貨幣の時間価値を反映した無リスクかつ税引前の利率とされます(会計基準6(2)、適用指針5、23)。無リスクであるのは、将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクについては、将来キャッシュ・フローの見積もりに反映されることからであり、無リスクの割引率の例示として、将来キャッシュ・フローが発生するまでの期間に対応した利付国債の流通利回りなどが挙げられています(適用指針23)。

(3) 資産除去債務に対応する除去費用の資産計上と費用配分

 資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上したときに、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加えます。資産計上された資産除去債務に対応する除去費用は、減価償却を通じて、当該有形固定資産の残存耐用年数にわたり、各期に費用配分されます(会計基準7)。
 資産除去債務が有形固定資産の稼動等に従って、使用の都度発生する場合には、資産除去債務に対応する除去費用を各期においてそれぞれ資産計上し、関連する有形固定資産の残存耐用年数にわたり、各期に費用配分します(会計基準8)。なお、この場合には、上記の処理のほか、除去費用をいったん資産に計上し、当該計上時期と同一の期間に、資産計上額と同一の金額を費用処理することもできます(会計基準8なお書き)。
 時の経過による資産除去債務の調整額は、その発生時の費用として処理します。当該調整額は、期首の負債の帳簿価額に当初負債に計上したときの割引率を乗じて算定します(会計基準9)。
 有形固定資産の取得価額と割引後の資産除去債務の金額の合計額が有形固定資産の取得原価を構成するため、減価償却を通じて各期に費用配分されます。一方、時の経過による資産除去債務の調整額は、時の経過に応じて費用計上されるとともに負債(資産除去債務)の増加として計上されます。