負ののれんとは、買収企業の買収額が被買収企業の時価純資産額を下回る場合に発生する差額をいいます。これは、企業買収を行った際に、買収企業の買収額と被買収企業の時価純資産額との差額において、買収額(現金・株式)が時価純資産額を下回り、資産価値に比べて割安で買収ができたことを示します。

 負ののれんについては、発生した事業年度の利益として処理します。ただし、本当に負ののれんが発生するのか、収益計上前に今一度調査をすることが求められています(同基準第33項参照)。これは、負ののれんは通常は発生しないものとされているため、買収企業の資産・負債の時価評価等の作業を今一度確認し、本当に負ののれんが発生する取引なのかどうか検討するように、というのがその趣旨と考えられています。

 投資法人の合併に際して消滅投資法人の資産・負債の受入処理をパーチェス法(時価受入れ)で行った場合に発生する「負ののれん発生益」に関する手当てが行われています。税務上、適格合併要件を満たせば資産・負債は「簿価受け入れ」となり、会計上の「負ののれん発生益」は益金不算入となります。(利益超過税会不一致) 

 しかし、損益計算書上の税引前当期純利益には負ののれん発生益が含まれているので、90%超判定式の分母である配当可能利益の額も増加することになります。

 負ののれんは会計上の利益の概念に過ぎず、裏付けとなる資金がないため、その分配の繰延べが考慮されたものです。上記のように負ののれんは発生した事業年度の利益として処理されるので翌期には任意積立金として貸借対照表の純資産の部に積み立てることになります。任意積立金は「任意」なので投資法人が独自に「配当調整積立金」など独自の科目名で計上されていることが一般的です。