「その他営業費用」は投資法人の財務諸表の損益計算書の一般管理及び管理費の一番最後に計上されている項目です。この「その他」の内容が非常に曖昧ですが、具体的にはIR関連費用や物件調査費用、印紙税、税理士、弁護士などへのアドバイザリーフィー等です。

 IR関連費用は決算短信、有価証券報告書などを開示する際に発生するコストです。上場会社にお勤めの方には解るのと思いますが開示資料作成に対してシステム提供や東証への入稿をしてくれる宝印刷やプロネクサスに支払う費用です。

 物件調査費用は運用中の物件に対して行う耐震調査やアスベスト調査等です。物件を取得する際にも調査を行いますが、物件取得時の調査費用は物件の取得価格として「建物」、「信託建物」等で貸借対照表の固定資産にて計上されるため損益計算書には出てきません。

 また、地震大国である日本は地震が頻繁に起こります。その際に被害を受けた物件を調査するコストも含まれます。もっとも、震災被害の場合はその後の復旧コストを合わせると高額になるケースも有り、そういった場合は「災害による損失」として損益計算書の特別損失に計上されます。
 
 印紙税は主にPM会社との管理契約の締結、資産運用会社との資産運用委託契約の締結、一般事務、資産保管契約を信託銀行や税理士法人と締結する場合、監査法人と締結する監査契約にて添付する場合等に発生します。臨時で発生するケースが多く、金額も他のコストと比べると少額なため分配金に影響を与えるケースはほぼ無いと考えられます。
 物件の売買について発生する印紙税については物件の取得については取得価格として処理されます。物件の売却については「不動産売却損益」として損益計算書にて計上されます。

 税理士、弁護士などへのアドバイザリーフィーは侮ってはいけない費用です。投資法人の決算短信や有価証券報告書、資産運用報告書及び各種プレスリリースは必ず税理士や弁護士のレビュー(確認)を受けています。資産運用会社は投資家に開示する資料について法定的に問題は無いかという確認を必要なまでに行います。自分達に被害が及ばないようにです。それは資産運用会社の負担で行って欲しいのですが、それらのコストを投資法人に負担させるということを「慣習」として行っています。良心的な資産運用会社の場合は投資法人と資産運用会社の費用負担の覚書等を締結し細かく規定している場合も有ります。

 「その他営業費用」は金額が少ない項目の集まりだとつい思ってしまいますが、前期や他投資法人と比べ金額が大きいと感じる場合は注意が必要です。具体的に何が含まれているのかという点はIRデスクなどに問い合わせて確認してみることをお勧めします。