インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人がJCR(㈱日本格付研究所)から取得している格付けについて長期発行体格付がA+(安定的)からA+(ポジティブ)に変更になったと発表しました。

格付事由

 現行ポートフォリオの資産規模は、直近行われた新規資産の取得によって18物件、取得価格合計2,204億円まで拡大し、上位5テナントの集中率は賃貸面積ベースで18.7%まで低下している。保有資産の稼働状況は引き続き良好で平均NOI利回り(NOI/取得価格)は2018年5月末時点で約5.1%である。財務面では、やや高めのレバレッジ・コントロールが続いているものの、良好なオフィス市況と投資口価格向上を重視した資産運用会社の様々な施策もあって足元ではNAV倍率も改善している。これまでの資産運用会社の取り組みによって、大都市圏に所在する大規模オフィスビルを投資対象とするポートフォリオとしては相応に高いテナント分散と収益性が実現されている上、財務運営にかかる柔軟性も高まっていると考えている。 以上を踏まえ、格付を据え置き見通しをポジティブに変更したとのこと。

 投資法人は2018年5月に仙台本町ビルの売却と増資等によって調達した資金にて5物件、取得価格合計635億円で新規資産を取得した。東京所在の大規模物件を中心としたポートフォリオかつ平均鑑定NOI利回り4.7%と一定の収益性も期待できる水準で取引を実現できたことは、資産運用会社独自のネットワークとソーシング力が活かされたものと見ている。また資本効率の向上を目的としたJ-REIT初の自己投資口取得や投資主の裾野拡大を目的とした投資口分割、個人投資家向けオンラインIRをはじめとするエクイティ投資家との積極的なコミュニケーション、環境不動産にかかる認証取得など、投資口価格向上に向けてインベスコ・グループが培ってきた専門性を活かした取り組みが行われている。

 財務面では、メガバンク3行を中心としたレンダーフォーメーションを維持しつつ、有利子負債残高1,213億円、総資産ベースの LTV50%弱、平均借入残存年数2.4年と、やや高めのレバレッジ・コントロールで運営されている。調達先の分散と長期化を図る取り組みとして借入金から投資法人債への切り替え、とりわけ2018年12月にはESG投資の世界的な普及を背景にグリーンボンドの発行が予定されい
る。財務基盤の一段の強化に向けて資金調達の多様化や金利上昇への対応など財務運営に関する各種施策とその実効性に注目していくとしています。
 

新規に取得した主要物件の評価

①西新宿プライムスクエア(取得日:2018年5月1日、取得価格:34,835百万円、鑑定評価額:37,600百万円)

 東京都新宿区に所在する地下2階付16階建ての高層オフィスビル。JR線・小田急線「新宿」駅から徒歩約8分、東京メトロ丸ノ内線「新宿」駅から徒歩約7分、JR 山手線「新大久保」駅から徒歩約7分の位 置に所在する交通利便性に優れた立地である。延床面積は約36,899㎡(約11,162坪)、基準階面積は約1,483㎡(約449坪)と比較的大型のオフィスビルであるが、貸室形状は、概ね整形で小分割も可能なため、 幅広いテナントのニーズに対応できる物件となっている。物件は築30年近く経過しているものの、2010年から2011年に大規模リニューアルを行うなど維持管理の状況は良好であり、2018年6月時点の稼働率は99.2%。

②麹町クリスタルシティ(取得日:2018年5月1日、取得価格:6,405百万円、鑑定評価額:6,820百万円)

 東京都千代田区に所在する、地下3階付14階建ての東館(オフィス・店舗棟)と地下3階付17階建ての西館(住宅棟)から構成される複合ビル。東京メトロ有楽町線「麹町」駅直結で、さらに東京メトロ半蔵門線「半蔵門」駅及び JR中央・総武線、東京メトロ丸ノ内線・南北線「四ツ谷」駅からも徒歩圏内の交通利便性に優れた立地である。土地にかかる共有持分及び東館建物の地下2階から1階の一部の区分所有権、2階から6階の区分所有権の共有持分、7階から14階の区分所有権を保有している。物件は築26年経過しているものの、維持管理の状況は比較的良好であり、2018年6月時点の稼働率は100%。

 格付け評価の変更は個人的には遅いくらいかと思っています。ただ、インベスコの外部成長が思ったよりも遅いという点から格付け評価が上がり辛かったのではないかと考えています。上場来から5年とまだまだ運用期間としては短いですが、取得価額ベースのNOI利回りは各自資料ベースで試算する5.3%なので不動産マーケット高止まり環境でこの数値は立派だと思います。今後も5%台をキープしていく運用を期待しています。