東京商工リサーチによると金融庁がスルガ銀行で問題となった投資用不動産向け融資について3月28日、金融機関へのアンケート調査の結果を公表しました。アンケート結果によると、投資用不動産向け融資態度を2016年3月期時点で「積極的」と答えた銀行は15%、信金・信組は7%でしたが、2018年9月期では銀行が3%、信金・信組は2%に減少。消極的な姿勢の金融機関が増えていることが明らかになりました。

 スルガ銀行ではシェアハウス向け融資で資料改ざんなどを行った不動産の紹介業者が問題になりましたが、2018年3月期以前で紹介業者と取引の開始に際し、要件や基準を定めていた銀行は14%、信金・信組は3%にとどまり、ほとんどの金融機関は紹介業者の適切性を検証していなかった実態が浮き彫りになりました。

 このため金融庁は、金融機関に対し投資用不動産向け融資に紹介業者やサブリース業者などが絡む場合、業務の適切性を検証し、取引スキームのリスク評価を行うことを求めました。

 さらにアンケート調査結果から一部の金融機関にはより詳細な実態把握を実施しているとし、必要に応じ立入検査も活用するということです。

 銀行の一棟建融資のリスクは低水準121の銀行、261の信用金庫、148の信用組合に、一棟建(土地・建物)を中心とした不動産投資の融資姿勢なども調査しており、銀行の投資用不動産の融資残高は2016年3月期時点の28.1兆円から2018年9月期では33.1兆円と積みあがっています。ただ、2018年3月期末の残高で、貸出金利息のうち一棟建向け融資の占める割合が40%以上の銀行はスルガ銀行のみという結果でした。また、10%から20%は6行で、多くの銀行は一棟建向け融資のリスクは低水準と考えているようです。

 不動産の紹介業者が紹介した顧客に融資した金融機関は、銀行が97%、信金・信組が79%と多数を占めていました。また、スルガ銀行の不正の融資問題が表面化する前の2018年3月以前に、紹介業者からの取引を停止した実績がある金融機関は、銀行が7%、信金・信組は3%とほとんど紹介業者の適切性を検証していませんでした。ただ、2018年3月以降は、紹介業者などの信用情報を取得する事例も多くみられるということです。

 融資審査で、顧客の給与明細などの原本を必ず確認する銀行は25%、信金・信組は31%だったのに対し、原本を一切確認していなかった銀行は7%、信金・信組は11%もありました。 融資実行後に賃料の実績を確認している銀行は39%、信金・信組は58%と管理や審査態勢に多くの課題が浮き彫りになっています。

 金融庁は、「紹介業者にまかせきりでなく、(金融機関が)自ら検証することが必要。現状、その姿勢が増えている」とコメント。アンケート結果を踏まえ、紹介業者などの問題は国交省などと情報共有するとしており、金融機関に審査書類の原本確認も重要だが、紹介業者に依存せず自ら顧客とリレーション(関係)を十分に構築し、リスクベースの期中管理を行うことを求めていいます。

 地方銀行は横浜銀行や千葉銀行等の東京都心の金融機関を除き、地元での融資先が減少していることもあり、非常に経営が苦しいことは苦しいです。そんな中で担保をとれば低リスクで貸し出しできる不動産向けの融資は手が出し安い選択だったということです。この当たりは金融庁であれば前から気付いていたはずなのでスルガ銀行に対し何らの手立てなり調査を行わなかった金融庁の監督にも一定の責任があるとは思います。

 今回の東京商工リサーチのアンケートについては個人の投資不動産向けの融資についてのみでしたがJ-REITでも多くの地方銀行がレンダーとして参画しています。J-REITの場合はメガバンクや信託銀行がアレンジャーとしてシンジケートローンを組成し、地方銀行がそこに構成員として参加するケースが多いため個人の投資不動産向けの融資よりもリスクは小さい(多くの手続き、調査、与信はアレンジャーが行ってくれるため)のでJ-REITに貸し出す地方銀行が増えてくれると良いと思うのですが、実際に地方銀行の融資担当者に話を聞いてみるとまだ、ノンリコースローンとして貸すことにハードルがあるという地方銀行もいるので今後、地方銀行はより淘汰が進んでいくと思います。