2019年3月15日に三井トラスト基礎研究所から2018年12月末時点の市場規模について発表されておりますのでご紹介致します。

【出典:三井トラスト基礎研究所私募ファンドの市場規模】
2018年12月末時点での不動産私募ファンドの市場規模を、運用資産額ベースで17.7兆円と推計しました(グローバルファンドによる国内運用資産額を含む)。前回調査(2018年6月末時点)から約8,600億円増加し、近年緩やかに増加している国内不動産私募ファンドの市場規模の拡大が継続しています。
運用資産額が減少したとする運用会社数を、増加したとする運用会社数が上回り、中には1,000億円以上運用資産が増加した運用会社も複数見られ、全体として前回推計結果から約5.1%の増加となりました。私募REITの外部成長による底上げに加えて、クローズドエンド型私募ファンドにおける資産規模拡大が不動産私募ファンド市場の拡大を大きく牽引しました。
総じて見れば、デット資金調達環境は良好な状態が継続しており、エクイティ投資家の投資意欲は高い状態で継続していると考える運用会社が多いものとみられます。
2018年下半期の物件の売買状況をみると、物件取得を行った運用会社が7割弱、物件売却を行った運用会社が5割弱となり、前回調査から取得・売却の割合がともに低下しました。市場への物件供給が少ない状態が継続している中で、価格目線の乖離が拡大しているとしています。
2019年3月時点で運用する不動産私募ファンドにおいて海外投資家からの資金を運用しているか否かについては、「運用している」が55%、「運用していない」が45%となっています。「運用している」という回答は2015年-2016年の6割前後の水準からはやや低下しましたが、近年は5割前後の運用会社が海外投資家資金を運用しています。2016年以降海外投資家資金を運用する運用会社の割合が低下傾向を示した理由としては、海外投資家の国内不動産の価格高騰に対する警戒感が考えられ、2018年以降の調査結果からは、低下傾向が一服し下げ止まっているともみられるとしています。

【出典:三井トラスト基礎研究所私募ファンドの市場規模】
私募ファンドの平均LTVは、現在運用中のファンドが56.7%、今後1年以内に組成予定のファンドが66.7%となっています。LTV水準の内訳は、現在運用中のファンドでは、「50%以上60%未満」の回答割合が29%で最大となり、二番目に「40%以上50%未満」(24%)となっています。一方で60%未満のファンドの合計割合が59%にのぼり、これまでの調査で最大となっています。三井トラスト基礎研究所では原因について、投資家の低リスク・低レバレッジファンド志向が強く、それがファンドの運用にも反映されていると分析しています。
私募ファンドの場合は私募REITのように投資法人スキームで運用される場合とTK-GKスキーム、で運用されるものも含まれます。TK-GKスキームで運用される私募ファンドの場合は投資法人スキーム、TMKスキームとの戦略が大きく異なり、短期で運用物件の売却益を狙うファンドが大きいことが特徴です。このような短期で運用物件の売却益を狙うファンドの場合、高い利回りで投資家を募集するためハイレバレッジ(LTVが高いということ)で設定されるケースが大半なので三井トラスト基礎研究所のレポートからは短期で売却益を狙うタイプのファンドについて分析しきれていないのではないかと感じます。
また、デット資金の調達環境に関しては「普通」とする回答が最多となり「緩い」とする回答を上回りました。デット資金調達が行いやすい状況で特に変化はないと感じている運用会社が多いと推察していますが、「普通」と回答した割合が「緩い」という回答を上回っていることから緩和的なデット資金調達環境がやや変化している可能性も指摘しています。
これは「かぼちゃの馬車」におけるスルガ銀行の問題により金融機関が勝手に不動産に関する融資を厳しくしたことによる影響が私募ファンドにも及んでいるのではないかと思います。特に私募ファンドの場合は確かに物件管理、帳簿管理ともに上場J-REITに比べると甘いというところもありますが、だからこそ上場J-REITが投資できないような物件に投資できる訳で、投資家へハイリターンを提供できるのです。金融機関の融資姿勢は金融機関自身の問題であり、不動産ましては物件の質の問題では無いと考えます。
エクイティの投資家の投資意欲については「変化はない」との回答が大多数を占めたとしており、「高くなってきている」という回答は12%で前回の調査から8ポイント減少しました。投資意欲があっても投資実行が困難な状況が長期にわたり継続しているので投資意欲は特段変化がないと考える運用会社が多いものと推察しています。これについては私も同様の意見です。ロードスターキャピタルなどを見ても投資実行ができても募集期間が短く投資機会を逃す個人投資家さんも多いのではないかと思います。投資意欲は高いけど投資できるものが無いという状況ではないでしょうか。
コメント
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。