富士物流からプレスリリースが発表されていますのでご紹介します。

荷動きは10月以降悪化へ「当面の荷動き回復は難しい」

 日通総合研究所は10月30日、2019年度9月調査による企業物流短期動向調査(日通総研短観)を発表しました。国内向け出荷量の動向では7~9月月の実績が「マイナス14」となり、4~6月実績の「マイナス15」より1pt改善していたが、10~12月の見通しは「マイナス19」となり4pt悪化しました。同調査は2,500社を対象に、7~9月の実績と10~12月の見通しを9月初旬時点で調査したもので859社から回答を得ています(回答率34.4%)。
 
生産関連の荷動き悪化が顕著に

 日通総合研究所は「この6年間の荷動き指数をみると2015年1~3月実績と2016年4~6月実績がともに『マイナス14』、今年4~6月実績が『マイナス15』を示し、そのあたりの数値がほぼ最低だった。今階調査の10~12月見通しは「マイナス19」と大きく下回った。多くの荷主が今後の荷動き悪化を懸念していることが明らかだ」と強調。その上で「日本経済の景気悪化により国内輸送量は伸長が期待できず、
一方で世界経済でも米中貿易摩擦に伴う中国経済の伸び悩みや、米国、欧州、アジアの各エリアで成長鈍化が顕著となっており、先行きは明るくない」と説明し、「当面は国内・国際ともに荷動きの回復は難しい局面だ」と予測した。業種別の荷動き指数をみると7~9月実績は全15業種のうち11業種がマイナスとな、10~12月見通しは12業種がマイナスとなりました。指数の推移を見ると7~9月実績は8業種で上昇しものの、10~12月見通しは11業種で低下した。特に金属製品は「マイナス8」、一般機械は「マイナス12」、輸送用機械は「マイナス13」、生産財卸は「マイナス15」と2ケタの下降が目立ち、夏から秋にかけて生産関連を中心に荷動きの悪化が目立ったとのこと。10~12月見通しは食料品・飲料(プラス2)、木材・家具(プラス17)、消費財卸(0水準)を除いた全品目がマイナスとなり、「品目別の推移でみても荷動きはかなり悪い状況だ」と説明しました。


運送業界はきついかもしれないが・・・

 また、トラックドライバー不足の状況は依然として続いていることからドライバーの賃金が上昇していく可能性が高く、倉庫業者にとっては運送コスト増加は避けられない状況です。しかし、 富士物流のプレスリリースの暗い雰囲気とは裏腹にCBREのレポートを見る限り東京首都圏を初めマルチテナント型の物流施設では7~9月の空室率は2.4%と過去最低の空室率を更新しています。近畿、中部、福岡と各地域でもマルチテナント型の開発が進んでおり、かつ、賃料水準の上昇がテナントに受け入れられつつあるということです。そもそも日本の経済は輸出頼みの傾向が強いため倉庫業者や物流施設のテナントの業績が悪すぎるということは少ないと考えられます。日通総合研究所は母体が日本通運ですからね。物流施設の賃料上昇は面白くないためネガティブな情報を煽っているのかもしれません。
20191122CBRE物流施設レポート
【出典:CBREジャパンロジスティックスマーケットビュー2019年第2四半期】

 CBREのレポートによると2019年7-9月までで東京ベイエリアでは空室率は0%という状況です。既存物件で空室を探すのは極めて難しい状況だと述べています。開発計画でも多くの引き合いがきており、ニーズの行き場がない閉塞感がでているとしています。近畿エリアでは空室率は5.6%となっていますが2018年7-9月と比べると1.5ポイント低下しています。福岡エリアでは空室が枯渇した状態が続いており、新規に福岡県内に1棟、佐賀県烏栖市に2棟のマルチテナント型の開発計画が発表されています。2021年竣工予定にもかからず、具体的な引き合いがよるようです。かつ、福岡市内への配送利便性が高い物件では、賃料の上昇圧力が強まっているようです。