2019年12月12日に公表された令和2年令和2年度税制改正大綱(与党大綱)に居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度等の適正化について触れられています。

 仕入税額控除とは、消費税の課税売上にかかる消費税から課税仕入にかかる消費税を控除することです。消費税の課税事業者は、課税売上と課税仕入から計算した消費税の差額を納税しなければなりません。
 例えば課税売上から計算した消費税が100円で、課税仕入から計算した消費税が80円であれば、差額の20円を納税します。この80円が、仕入税額控除の額です。

 仕入税額控除の要件は、消費税の「課税仕入」であること。つまり、消費税の課税取引としての要件を満たす仕入取引である必要があります。消費税の課税取引の要件は、「国内における、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供にかかる取引」です。これに該当しない課税対象外取引や非課税取引は、いくら事業に必要な仕入であっても、仕入税額控除に計上できる金額は0円です。この事業者の中にはもちろん投資法人も含まれます。

 仕入控除税額の計算方法には「個別対応方式」と「一括比例配分方式」が有ります。立上げ期を除き多くの投資法人では個別対応方式を採用しているはずです。個別対応方式とは、課税仕入をその内容から①課税売上にのみ対応する課税仕入、②非課税売上に対応する課税仕入、③課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入の3つに区分し、仕入税額控除の金額を個別に計算するものです。

 具体的にはレジデンス系J-REITは賃貸事業収入=入居者の賃料なのでほぼ非課税売上ということになります。例えば住宅としてのみ貸し付けるマンションを1,100百万円(税込)で購入したとしても、マンションの貸付けは非課税売上です。そのため、この100万円は仕入税額控除に含めることができません。しかし、これが住宅兼店舗として貸し付けるための建物であれば、これは両方に共通する仕入れとなります(居住用不動産の貸付け:非課税売上、店舗の貸付け:課税売上)。したがって、100万円×課税売上割合が仕入税額控除となります。

 J-REITの場合はレジデンスといっても1階がコンビニ等、物件が100%居住用でないレジデンスも多いため課税売上割合に基づき仕入税額控除額を計算するケースも多いかと思います。それでも非課税売上が大きいため、課税売上割合は30~40%の水準になると思います。

 実はこの消費税の仕入税額控除制度は賃貸してその賃料を投資家に分配するJ-REITの場合は問題は無いのですが、不動産の賃貸だけでなく転売することで配当金を支払っている私募ファンドは大きな問題です。私募ファンドの場合は私募REITなど一部のファンドを除き、短期間で売却し売却益を得ることを目的としている商品が主流です。建物の取得時に上記①の課税仕入として処理することで取得時の消費税を全額控除させています。これは私募ファンドは「主に賃貸目的ではなく転売目的の取得であるため」という理屈により成り立っていたからです。

 ですが、2020年からはこれを適用することは難しくなります。「転売目的であっても、賃料を当てにしていることは明確だから課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入として処理するように」ということになってしまったからです。全額控除できていたものが、30%~40%程度しか控除できないということになるのです。

 最も簡単に言うと仕入税額控除ができない部分は「租税公課」としてPLに計上されてしまうので利益が減少します。そして当然配当金も減少するということになります。

 J-REITの場合は元々「投資法人スキーム」で運用されているため期間の定めが無く、永続的に運用されていくことが前提となります。つまり投資法人が取得する物件は中長期保有が一般的なので「賃料を当てにして物件を取得する」ということになります。そのため建物の取得時は上記③の課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入として処理しているため従来から何も変わらないため影響は少ないと思います。

 私募ファンドというのはもちろんブリッジSPCも含まれるので私募ファンド界隈ではレジデンスへの投資が減少する。もしくは、利回りが2019年よりも低下し