2020年8月28日に日本リテールファンド投資法人がMCUBS MidCity投資法人と合併する旨を発表しました。2020年8月28日のMCUBS MidCity投資法人決算発表を待ってからの合併リリースとなりました。業績予想の修正も開示しておりますが2021年2月期の分配金は4,500円と前回と変わらずです。

20200831日本リテールファンド投資法人業績予想
【引用元:日本リテールファンド投資法人2021年2月期(第38期)の運用状況の予想の修正】

 日本リテールファンド投資法人は、日本初の商業施設不動産の運用に特化した投資法人として、また、不動産会社以外の会社がスポンサーとなる初めての投資法人として、2002年3月に東京証券取引所のJ-REIT市場に上場しました。日本リテールファンド投資法人は、上場来、複数の公募増資を通じた物件取得及び2010年3月に効力が発生した日本リテールファンド投資法人とラサールジャパン投資法人との合併等を通じて資産規模の拡大を実現してきました。現在は商業系REITの中では最大規模を誇り、2020年7月時点では101物件、合計8,838億円(取得価格ベース)の資産を保有しています。
 日本リテールファンド投資法人は、 都市部への人口集中、人口減やEコマースの進展等による郊外エリアの衰退、都市部で拡大し続けるインバウンド消費等の商業施設を取り巻く環境変化を見据え、「人が集まる立地」にある都市型商業施設への重点投資を行っています。また、人が集まる立地への重点投資に加え、資産運用会社が長期にわたる運営により培ってきた日本リテールファンド投資法人ならではの「人を集める力」を結集させた施設運営を行っています。

 MCUBS MidCity投資法人は、大阪圏(大阪府、京都府及び兵庫県)のオフィスビルを重点的な投資対象とするMIDリート投資法人として2006年8月に東京証券取引所のJ-REIT市場に上場しました。2015年4月に、三菱商事・ユービーエス・リアルティ㈱がメインスポンサーとなり、旧MIDリートマネジメント㈱は商号をMCUBS MidCity株式会社に変更しました。その後、MIDリート投資法人は商号をMCUBS MidCity投資法人に変更すると共に投資対象エリアを、大阪圏から三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)中心に拡大し運用してきました。また、2019年7月1日付で 資産運⽤会社を吸収合併存続会社、MCUBS MidCity株式会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行い、資産運⽤会社がMCUBS MidCity投資法人の資産運用会社となりました。
 2020年6⽉末時点では26件(名古屋ルーセントタワー を裏付資産とする匿名組合出資持分を含む。)、2,876億円(取得価格ベース)の資産を保有しています。


合併の経緯

 足許の不動産市場における商業及びオフィス市況に対する不透明感、並びに、不動産へのニーズの変化に伴いアセットタイプの垣根が崩れていく等の環境変化の中で、日本リテールファンド投資法人投資法人についてはセクター特化型、MCUBS MidCity投資法人についてはセクター重点型であるがゆえに、成長に制限が存在することが両投資法人の課題。特に、IT化の急速な進⾏によるEコマースや在宅ワークの発展及びエリア・物件単位での⽤途の複合化の進展等、両投資法人を取り巻く運用環境は刻々と変化しており、かかる変化は足許の新型コロナウイルスの発⽣を契機に更に進展していることから、両投資法人は物件の立地や物件の提供する付加価値へのニーズの変化に今まで以上に柔軟に対応していく必要があると述べています。
 両投資法人はこれらの課題へ対処するとともに、継続的な投資主価値の向上に資す安定性と成長性を兼ね備えたJ-REITとなるべく、両投資法人は、合併を通じた資産規模の拡⼤によるJ-REIT市場におけるプレゼンスの向上及び総合型REITへの転換による投資対象用途の拡大により更なる安定性及び成長性の向上に繋がると判断し合併契約を締結しました。


合併の意義

①環境変化への対応

 資産運用会社は、これまでの両投資法人の運用を通じて、各用途の中でテナントリレーションや賃貸マーケット情報収集に基づくリーシング、リニューアルや建替え・増床・用途転換等のバリューアップ、集中的な物件取得や人流分析によるエリアマネジメント、MSCI評価で最高位の評価取得に裏打ちされたESG推進等の多様な運用経験を積み上げ、運用力に磨きをかけてきた。資産運用会社は、これまでの両投資法人の運営経験で培った多様な運用力を組み合わせ、刻々と変化する運用環境に対して、既存用途に囚われない、用途の垣根を越えた積極的な内部成長施策を実施し、柔軟に対応する方針。
 →日本リテールファンド投資法人とMCUBSMidCity投資法人は同一の資産運用会社です。資産運用会社内での情報交換は以前から当然なされていたと考えるべきで、それは期中の運用担当だけでなく取得・売却担当も同様です。つまり合併したところで資産運用会社が得られる情報はこれまでと変わりなくソーシング力、運用力はこれまで変わらないというところが実態だと考えられます。

②投資対象用途の拡大

 合併に伴い、新投資法人は総合型REITへの転換を機に投資対象用途の拡大を行う予定。新投資法人は、従前日本リテールファンド投資法人が投資対象としていた商業施設並びにMCUBS MidCity投資法人が投資対象としていたオフィスビル及びホテルに加えて、住宅及びこれらの用途の複合施設といった新たな資産への投資が可能となり、環境変化に応じた持続的な外部成長が可能になると予想。特に、都市部において物件の用途の複合化が進展していると 両投資法人は考えていることから、投資対象用途の拡大により、⼀つの物件用途に拘ることなく、環境変化に応じた施設運営の柔軟性が向上すると考えています。また、物件の取得に際しても、合併前は両投資法⼈での取組みが難しかった複数用途に跨るバルクセールのような大型取引での大規模取得が可能となり、これによって外部成長の蓋然性を⾼めることができると両投資法人は考えており、これまで以上に独自のネットワーク及びスポンサーサポートを活用し、持続的な外部成長を図っていく方針。
 →都市部において物件の用途の複合化が今後も進展してくると考えているようですが、これまでも日本リテールファンド投資法人先に検討しその後、取得できるようなポイントがあればMCUBS MidCity投資法人が検討するという流れになっているのではないでしょうか。1箇所でも店舗があれば他の用途が住居だったとしても複合施設として取得できるはずです。
 MCUBS MidCity投資法人は確かにホテルを取得していますが大ダメージを負う事態にはなっておらず主力のオフィスビルは好調です。一方、日本リテールファンド投資法人は肝いりの商業施設が営業自粛の憂き目にあいせっかくリニューアル工事も実施し、オープンのプレスリリースもしたのに来場者数は予想を大きく下回っていることは容易に予想できます。そして今後もコロナウイルスと付き合っていかなければならない。となると、今回の合併は「日本リテールファンド投資法人を救いたい」がテーマになっていると考えられます。怖いのはバルクセールのような大型取引での大規模取得が可能と思っている点。バルクセールとは「良い物件売るからクソ物件も買ってね」という売り手の戦術です。これはクソ物件を掴むリスクが大きくなるということを意味します。

③J-REIT最大の資産規模へ

 合併後の新投資法人は、物件数が127物件(名古屋ルーセントタワーを裏付資産とする匿名組合出資持分は除く。)、資産規模が合計1兆1,915億円(取得価格ベース)に到達することが想定されており、
J-REIT最大の資産規模を有するJ-REITとなる予定(2020年7⽉末時点)。資産規模の拡大により、キャッシュ・フローの安定化のみならず、資本市場におけるプレゼンスの向上、物件・テナントの分散及び運用柔軟性の向上など、安定性の向上と成長の加速を実現するための素地を構築出来ると、両投資法人は考えている。
 →プレスリリースを読むと「両投資法人は考えています」という記載がところどころありますが、資産運用会社とスポンサーが同じなら同じ考えになるでしょうよ。
 上記②の投資対象用途の拡大と資本市場におけるプレゼンスの向上、物件・テナントの分散及び運用柔軟性を更に向上させる方法ありますよね?ハイ。産業ファンド投資法人と合併することです。
 産業ファンド投資法人も資産運用会社は同じです。総合型REITになるのであれば当然物流施設の収益性、利回り、安定性は魅力のはずですよね。どうせなら一気に3社合併に持っていって下さいよ。3社合併は野村マスターファンド投資法人が以前行っているから前例も有りますよ。MCUBS MidCity投資法人は外様だから別に吸収してもいいやということですよね?


今後の日程

・日本リテールファンド投資法人

・合併契約締結日:2020年8月28日
・投資主総会基準日:2020年8月31日
・投資主総会開催日:2020年10月23日(予定)
・投資口分割基準日:2021年2月28日(予定)
・投資口分割効力発生兼合併効力発生日:2021年3月1日(予定)

・MCUBS MidCity投資法人

・合併契約締結日:2020年8月28日
・投資主総会基準日公告日:2020年8月29日
・投資主総会基準日:2020年9月13日(予定)
・投資主総会開催日:2020年10月22日(予定)
・上場廃止日:2020年2月25日(予定)
・合併効力発生日:2020年3月1日(予定)
・合併登記日:2020年3月上旬(予定)
 
 MCUBS MidCity投資法人で投資口を2つに投資口分割を行った後、1:1での合併を実行されるようです。今回の合併については「日本リテールファンド投資法人を救う」がテーマなので日本リテールファンド投資法人の投資家さんにはプラスの意思決定だと思います。ではMCUBS MidCity投資法人の投資家さんにはどうかというと中期・長期的に観点で見るとやはりプラスかと思います。MCUBS MidCity投資法人の資産はポートフォリオ全体では含み益が出ていますが、物件単体では含み損が出ている物件が多いという特徴があります。運用年数が経過していけば物件の簿価が鑑定評価額よりも低くなる時期は来ると思いますが含み益が出たからといってその時の鑑定評価額で物件を売却できるか?というと難しいと思います。つまりMCUBS MidCity投資法人は出口戦略におけるリスクが相対的に高い投資法人ということです。
 上記でさんざん煽っていますが、私が言いたいのはMCUBS MidCity投資法人は投資対象の立地において特徴がある投資法人であり、運用アセットはオフィスビルが中心なので合併しなくても存続していけるということ。総合型REITを目指すならなんで産業ファンド投資法人と合併しないんですか?ということの2点です。ここから導き出されるのは投資家さんのために総合型REITになることではなく、資産運用会社として商業施設の資産規模№1である日本リテールファンド投資法人という名前を残したいという「日本リテールファンド投資法人を救いたい」が合併のコンセプトではないのですかと思う訳です。

 個人的にはMCUBS MidCity投資法人が合併する相手は阪急阪神リート投資法人だと思います。そこで福岡リート投資法人が九州エリア№1を構築しているのように、関西エリア№1を目指すべきだったのではないでしょうか。


「いちご」お前も辛かろう

 残る身内合併が起こりそうな投資法人はというと、やはり、いちごオフィスリート投資法人といちごホテルリート投資法人ではないでしょうか。既にインヴィンシブル投資法人が賃料減額&建物管理コストの一部負担というみっともないことの実績は作ってくれています。ジャパン・ホテル・リート投資法人が老舗のホテル系J-REITでも運営が辛いという実績を作ってくれています(こっちはコスト削減をめい一杯行った上でのことですが)。そして今回日本リテールファンド投資法人が生きるために身内を犠牲にするという実績を作ろうとしています。ここでいちごホテルリート投資法人が消滅しても誰も怒らないですよ。それともいちごインフラファンド投資法人と合併して、スポンサーからなんでも取得する多目的投資法人を目指しますか?