2020年9月14日に伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人の決算が発表されました。
分配金は当初の予想一口当たり分配金が2,382円のところ2,425円で着地しました。

伊藤忠という商社スポンサーにより他業界景気の変動をキャッチできることは強み
20200926伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人NAV倍率

 新型コロナウィルス感染症拡大に伴う活動自粛の影響から、不動産賃貸需要、特にホテルや商業施設については大きく減退しており低迷が続いています。しかし、物流不動産賃貸市場は、このような状況下においても足元では電子商取引(EC)市場の拡大は継続しており、生活に必要なインフラとして引き続き需要増が予想されます。従って、不動産売買取引市場においても、物流不動産に対する需要はJ-REIT、私募リート、私募ファンド等による投資姿勢の継続を背景に今後も堅調に推移すると。
 2020年7月期は、2020年2月3日付でアイミッションズパーク柏2(準共有持分70%)、2020年4月1日付でアイミッションズパーク印西(準共有持分20%の追加取得)を取得しました(計2物件、取得価格含計25,270百万円)。これにより2020年7月期末時点における投資法人の保有資産は9物件、取得価格合計84,100百万円となっています。そして、伊藤忠グループと連携し、適切な管理運営のもとに保有9物件の着実な運用を行った結果、保有資産全体の稼働率は2020年7月期末時点99.9%と良好な稼働状況を維持しています。2020年7月期の業績は営業収益2,399百万円、営業利益1,193百万円、経常利益1,047百万円、当期純利益1,046百万円となりました。


LTV40.6%の低さ、DSCR21.8%の高さから安全性は抜群

 2020年7月期の財務面の動きは、2020年2月3日を払込期日とする公募増資により13,852百万円を、2020年2月19日を払込期日とする第三者割当増資により617百万円をそれぞれ調達し、2020年7月期末時点の出資総額(純額)は49,681百万円となりました。
 また、新規2物件(うち1物件は、準共有持分の追加取得)の取得資金及び関連費用の支払いの一部に充当することを目的として、2020年2月3日付で6,700百万円(長期借入金)、2020年3月31日付で5,513百万円(短期借入金1,513百万円、長期借入金4,000百万円)の借入れを行いました。その結果、2020年7月期末時点の有利子負債残高は36,153百万円、LTVは40.6%となりました。2020年6月期末時点の格付機関から得ている格付は以下の通りです。
・㈱日本格付研究所(JCR)、長期発行体格付:A+、格付の見通し:安定的

 伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人が他の投資法人と違う特徴としては、商社・商流プラットフォームと呼んでいるスポンサーである伊藤忠商事の知見です。商社ということもあり、生活消費関連ビジネスに強みをもつ伊藤忠グループは、物流と親和性の高い商流領域を中心に約10万社に
及ぶ顧客ネットワークを有しており、顧客本来のビジネスに深く入り込んだ顧客リレーションを活用することで、優良なテナント企業の開拓・獲得や開発用地の確保(CRE戦略)を進めることが可能と述べています。これは物件の開発というよりも将来の予測であったり新規テナントのリーシングといった面では強みになると思います。もう1つのスポンサー伊藤忠都市開発㈱もいますが、2017年4月より物流不動産開発の専門部署を立ち上げたばかりです。2004年より物流不動産開発事業を本格的に展開していることを説明してはいますが、物流施設においては老舗ディベロッパーとは認知されていないと感じています。(オフィスビルや商業施設では老舗と言っても良いかもしれません)。物流施設は大型になりがちなので投資法人サイドからするとオフィスビルやレジデンスに比べると直ぐに取得できるようなアセットではありません。投資家さんにはスポンサーが伊藤忠だからといって成長スピードが爆発的に早くなる訳では無いということはご留意頂きたいと思います。