2020年10月13日にタカラレーベン不動産投資法人の決算が発表されました。
分配金は当初の予想一口当たり分配金が3,000円のところ3,029円で着地しました。

冷静な市場分析は〇
20201020タカラレーベン不動産投資法人NOI推移

 タカラレーベン不動産投資法人の保有資産においても新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を一定程度受ける一方で、投資法人は、「ポートフォリオの質の向上」、「スポンサー間の役割の明確化」、「内部成長・その他施策の実施」の3つの中期運用戦略に基づき、賃料の増額交渉やコスト削減による内部成長を図るとともに、2020年3月には手元資金によりスポンサーである㈱タカラレーベンからラグゼナ本厚木を購入して外部成長を図った結果、2020年8月期末におけるポートフォリオの総賃貸面積は141,450.90㎡、稼働率は98.1%と前期末対比+0.4%となりました。2020年8月期の運用実績は、営業収益2,750百万円、経常利益1,399百万円、当期純利益1,399百万円を計上し、1口当たり分配金3,029円となり当初予想を29円上回ることとなりました。
 タカラレーベン不動産投資法人は現在の不動産マーケット環境について、オフィスは、2020年8月における東京の空室率は3.07%と低下基調にブレーキがかかりつつあるが、平均賃料はさほど低下しておらず、堅調なニーズが見込めるとしています。テレワークの普及による減床の可能性が指摘される一方で、対人距離確保等の感染予防の観点から1人当たりオフィス面積の拡大ニーズも想定されるため、オフィススペースの需要動向が明確になるには、時間がかかるものと予想しています。個人的には私も同じ考えです。オフィスビルの宇空室率は戻らないという人もいますが、オフィスは比較的コンバージョンも容易であることや区画工事を行い部屋数を増やすことで、大規模テナント型のオフィス→中小規模オフィスへの転換も可能なので取り返しが効くという点でも安定性を取り戻していくと思っています。


コロナで難しい時期に格付け取得は立派

 2020年8月期の財務面の動きですが2018年7月30日付で㈱三井住友銀行をアレンジャーとする協調融資団より借り入れた15,000百万円(返済期日:2020年7月30日)について、2020年7月30日付で借換え(4,950百万円(返済期日:2022年7月29日)及び10,050百万円(返済期日:2025年7月31日))を実施しています。この結果、2020年8月期時点における借入金残高は43,400百万円となり、LTVは45.9%となっています。タカラレーベン不動産投資法人ではLTVは原則60%を上限としています。2020年8月期末時点の格付機関から得ている格付は以下の通りです。
・㈱日本格付研究所(JCR)、長期発行体格付:A-、格付の見通し:安定的


 2020年6月18日にJCRではありますが、格付機関から格付けを取得したことは立派だと思います。特にコロナウイルスによる緊急事態宣言明けで「これからどうなるの?」的な不安感に覆われた不安定な時期にA-の評価をもぎ取ったことは評価できると思います。レンダーや格付機関はめんどくさいことは棚上げにしたがりますからね。しかし、JCRは財務面については「上場以来、LTVが48%から 50%とやや高めの水準で推移してきたが、2019年9月に実施した増資以降は資産運用会社の想定通り低位にコントロールされており、2020年2月期の総資産LTVは45.9%となっている。レンダーフォーメーションでは、三井住友銀行を中心に地方金融機関も含めて16の金融機関と取引があり、足元の財務運営に特段の懸念は見当たらない。デットの調達状況についても増資に合わせて実施した借入の際に一定の改善が図られ、平均借入期間及び固定借入比率は2020年2月期でそれぞれ3.2年、98.8%となっているが、調達期間の一層の長期化やマチュリティ・ラダーの分散化によって、より安定的な財務基盤を構築していくことが期待される。」と調達期間の一層の長期化やマチュリティ・ラダーの分散化と注文を付けているので今後はこの2つの改善に向けて動くことになりそうです。