2020年12月15日に星野リゾート・リート投資法人の決算が発表されました。
分配金は当初の予想一口当たり分配金が12,753円のところ12,860円で着地しました。

安易に賃料減額しなかったことは◎
20201224星野リゾート・リート投資法人賃貸事業利益推移

 星野リゾート・リート投資法人は、観光客の旅のニーズに応えるホテル、旅館及び付帯施設を中心とした安定的な収益基盤を持ったポートフォリオを構築していくことを基本戦略としています。一般的にコモディティ化(似ている商品やサービスが大量に誕生し、それらが最適な生産性で生産され、効率的に消費者に届けられることで、どの企業も競争優位を維持できなくなる状態)の傾向が見られるホテル・旅館業界にあって、今後も安定した収益を生み、長期的かつ安定的なキャッシュ・フローを確保することが可能なのは、ビジネスモデルや運営力、立地等の優位性などで差別化された施設であるという観点から、星野リゾート・リート投資法人は、「ソフトの優位性」(競合他社と異なる差別化されたビジネスモデル、ブランド力等を有しており、運営について高い専門性を有するオペレーターにより運営されているかどうか)と「ハードの優位性」(立地の優位性や建物の希少性等により施設自体に優位性があるかどうか)という二つの観点から、投資対象資産を選定しています。

 星野リゾート・リート投資法人では保有するホテル・旅館において、安定した収益の確保を図るべく運用を行いましたが、2020年4月7日の緊急事態宣言以降は、都道府県や自治体からの休業要請や住民に対する外出自粛要請により、2020年10月期末に保有している61物件のうち21物件において一定日数の休館が実施される等、未曽有の状況となりました。しかし、2020年8月以降は一定の需要回復の兆しが見えており、特に星野リゾートグループが運営するホテル、旅館及び付帯施設においては、マイクロツーリズムや3密回避滞在の提唱等により、同業他社と比較して速やかな回復を実現しています。2020年10月期の業績は、営業収益6,021百万円、営業利益3,238百万円、経常利益2,854百万円、当期純利益2,853百万円となりました。賃貸事業収入が前期から多少は減少していますが、これによりオペレーターであるスポンサーからしっかり賃料を受け取れていることが解ります。

財務の安全性には疑う余地は無い
 
 2020年10月期の財務の動きにおいては、2020年6月30日に借入れにより、149百万円の調達を行い、「西表島ホテル」の改装資金の一部としました。また、2016年11月1日に借入れにより調達した長期借入金の残元本総額2,500百万円の既存借入金の返済期限の到来にあたり元本返済資金を調達するため、2020年10月30日に借入れにより短期借入金1,100百万円及び長期借入金1,400百万円の調達を行いました。なお、借入金の約定弁済等があった結果、2020年10月31日現在の有利子負債残高は67,848百万円となり、LTVは37.9%となりました。2020年10月期末時点の格付機関から得ている格付は以下の通りです。
・㈱日本格付研究所(JCR)、長期発行体格付:A、格付の見通し:安定的、債券格付:A

 レンダーポートフォリオは三菱UFJ銀行が31.6%、日本政策投資銀行22.4%、三井住友銀行24.1%と動きの悪い三菱UFJ銀行がメインレンダーなのが気になるところですが、日本政策投資銀行がシェア二番手にいるというところです。国として星野リゾート・リート投資法人はやはり特別な存在であるという認識なのだと思います。そういった意味で資金調達余力は他の投資法人と比べると高いと考えられます。LTVも30%~40%を目標レンジとして上々依頼から40%を超えたことがありません。財務戦略においてはスキは無さそうです。