日本都市ファンド投資法人が私募REITの日神プライベートレジリート投資法人の投資口を取得したと発表しました。

取得資産の概要

 ①取得資産:日神プライベートレジリート投資法人の投資口
 ②取得資産の裏付不動産:川崎桜本WEST、N-stage Matsudo を含む26物件
 ③取得投資口数:300口(NSPRの発行済投資口総口数の2.0%)
 ④取得予定価格:337百万円(2020年12月末日現在の基準価額に基づく)
 ⑤本投資口約定日:2021年5月7日
 ⑥本投資口取得予定日:2021年5月11日
 ⑦取得先:みずほ証券株式会社
 ⑧投資口取得資金:自己資金 


私募REIT投資口取得の理由
20210518日神プライベートレジリート投資法人ポートフォリオ


 住宅特化型私募REITの投資口取得を通じた規模感ある住宅エクスポージャーの獲得

 日本都市ファンドは、「日本の都市生活(住む、働く、消費する)を不動産面から支えていく」を理念に掲げ運用を行っています。日神プライベートレジリート投資法人は中堅のマンションデベロッパーである㈱日神グループホールディングスをメインスポンサーとする非上場オープンエンド型投資法人(資産運用会社:日神不動産投資顧問㈱)であり、賃貸住宅を主な投資対象としています。
 日神プライベートレジリート投資法人は、日神グループHDをはじめとするスポンサーグループのサポートを最大限に活用しながら、今後も人口流入、世帯の小規模化により賃貸住宅の継続的需要が見込まれる東京圏を中心として、優良物件を選別し、賃貸住宅のテナント満足度を高めることでポートフォリオの質的向上を図り、中長期にわたる運用資産の着実な成長と安定した収益の確保による投資主価値の最大化を目指している私募REITです。日本都市ファンドは以下の3点で日神プライベートレジリート投資法人を評価しています。

 日本都市ファンド投資法人から見た分析

 ・この日神プライベートレジリート投資法人の投資方針は、「日本の都市部不動産への投資を通じて、投資主価値の向上を実現していく」という日本都市ファンド投資法人の目標とも合致している。
 ・近年、賃貸住宅の売買マーケットは過熱しており、日本都市ファンドの主要資産である東京圏の築浅物件を日本都市ファンドのポートフォリオ鑑定NOI利回り(5.2%)レベルで取得できる機会は限定的であり、収益性の側面からもポートフォリオは良好。
 ・資産運用会社、日本都市ファンド投資法人、日神プライベートレジリート投資法人、日神グループHD、日神不動産投資顧問(日神プライベートレジリート投資法人の資産運用会社)の間で、交渉・協議を行い、取得を皮切りに日神プライベートレジリート投資法人の今後の増資時においても投資法人による継続的な投資口取得に向け誠実に協議すること等につき合意しており、日神プライベートレジリートの成長をサポートするとともに、投資口取得を通じた質・収益性の高い住宅ポーションの拡充を図る方針。
 →鑑定NOI利回り5.2%レベルでレジデンスを取得できる機会は中々無いという理由は分かります。利回りが高くてもバルクでしょうもない物件が付いてくるということもよくあります。また、「日神不動産」という中堅ディベロッパーというネームバリューもあるため開発した物件はそれなりのブランド価値による競争力も期待でき、私募REITというそれなりのSPCで調査し取得・運用しているという安心感もあります。反対に日神プライベートレジリート投資法人は出資を受け入れて欲しい物件があるのだろうか・・・という疑問があります。そもそも弾を用意できているのでしょうか?


 住宅運営に関する更なる知見の向上

 日本都市ファンド投資法人の前身である日本リテールファンド投資法人と MCUBS MidCity投資法人は賃貸住宅を投資対象としていませんでしが、日本都市ファンド投資法人は総合型REITとして賃貸住宅についても新たに投資対象としています。資産運用会社においては、賃貸住宅の投資運用の経験を有する人材を中心に、賃貸住宅の取得運用に関する知見ノウハウを積み上げており、すでに住宅×オフィスの複合型施設の取得を決定しています。今回、日神グループHDをはじめとするスポンサーグループのサポートを受ける日神プライベートレジリート投資法人の投資口取得や日神グループHDとの協業等を通じて、賃貸住宅マーケット情報や運用ノウハウ等を獲得し今後の賃貸住宅物件及び住宅を含む複合施設の取得並びに賃貸住宅の運用に関する更なる知見の向上に努めることが期待できます。
 →日本都市ファンド投資法人は総合型REITとして賃貸住宅についても新たに投資対象としているならさっさと日本都市ファンド投資法人がレジデンスを取得すればよいことです。まずは日神グループHDから物件情報を入手し賃貸市場をしっかり把握する狙いがあると考えられます。

 
 ③外部成長力の強化

 取得機会が限定的な賃貸住宅売買マーケットにおいて、日神プライベートレジリート投資法人の投資口取得を通じて日神グループ HDと協議することが可能となり、日神グループHDが開発する物件に関し、日神プライベートレジリート単独では取得困難な大型賃貸住宅物件の共同取得や日神プライベートレジリート投資法人で取得困難な物件の日本都市ファンド投資法人による取得等に関して今後協議をしていく。
 →日本都市ファンド投資法人のスポンサーが三菱商事㈱ということで入手できる物件情報(ソーシング力と言ったりもします)は明らかに日本都市ファンド投資法人の方が日神グループHDよりも上です。
また、日神プライベートレジリート投資法人は運用している26物件のほとんどが「N-stage」という日神不動産㈱のマンションブランドです。つまり、日神プライベートレジリートは日神グループHDが開発した物件を取得し運用することがコンセプトのはずです。それがスポンサーそっちのけで、「単独では取得困難な大型賃貸住宅物件」の取得を考えますかね?たとえ第三者との共同取得としても。


まとめ

 日本都市ファンド投資法人はメインのアセットが商業施設であるため景気感応度の高いJ-REITです。緊急事態宣言が現在も続いている中で変動賃料によるアップサイドは取れないですし、モール的なレジャーと混在しているようなアセットが多いためテナントによる賃料滞納・賃料の減額懸念や退去の可能性もあることから分配金の安定性という面では不安が残ります。

 そこでレジデンスを主力とする日神プライベートレジリート投資法人という私募REITに出資という形で投資することにより住居の賃料という安定収益を間接的に収受することで分配金の低下を抑えようということが狙いだと思います。日本都市ファンド投資法人の投資家さんからするとメリットは高いのでこの出資自体に文句は無いと思います。

 個人的に気になるのはこの出資の話しを日本都市ファンドサイドが言い出したことなのか?、日神グループHDサイドなのか?という点。これは日神グループHDサイドであることが濃厚ですね。日神グループは独立系としては中堅どころですが、成長性にもう限りが見えているのだと思います。日本都市ファンド投資法人サイドは将来的に合併を狙っているのではないでしょうか。