2021年3月期決算のJ-REITの安全性について分析しました。

・有利子負債利子率
20210604J-REIT3・4月決算有利子負債利子率
20210604J-REIT3・4月決算有利子負債利子率2

 3月・9月決算投資法人の有利子負債利子率の推移は順調に減少しいます。相変わらず低金利が続く金融マーケットのもとリファイナンスによる金利コスト削減を継続していることが全投資法人において言うことができます。
 ジャパンリアルエステイト投資法人は支払利息の削減だけでなく、有利子負債償還年数も上手く調整しています。長期借入金の返済日に合わせ投資法人債の償還日を設定していることは決算説明会資料の21ページにグラフとして載っています。3月・9月決算投資法人の中ではジャパンリアルエステイト投資法人の財務戦略が客観的に信頼が置けそうです。3つの格付け機関(S&P、Moodyʼs、R&I)から格付を取得しており、Moodyʼsには格付アウトルックをネガティブと評価されていますが、他の2つからは安定的という評価を得ています。(Moodyʼsはリーマンショック時代に過去評価が甘かったこともありかなり保守的な評価を行っているようです)。
 最近では個別に農林中央金庫との関係を含めており、2021年1月には10,000百万円の借入れを行っています。これはサスティナビリティ戦略とも連動しており、J-REIT初となるサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)による資金調達を実施しています。SSLについてはJCRより第三者意見を取得しており、環境省 「令和2年度サステナビリティ・リンク・ローン等モデル創出事業に係るモデル事例等」に選定されています。他の投資法人はまだ、サスティナビリティ戦略を詰め切れていない感じも受けるのでこれからの取組みは慎重に判断していくことになると思います。


・LTV(有利子負債比率)
20210604J-REIT3・4月決算LTV推移
20210604J-REIT3・4月決算LTV推移2

 LTVは有利子負債÷総資産で算出しています。大和証券リビング投資法人は物件取得による借入れの発生により前期より微増しています。森トラスト総合リート投資法人は物件のの入替えがあり、既存物件の売却価格と新規物件の取得価格が同額でしたが、不随費用のことを考慮してか長期借入金30億円、投資法人債20億円前期よりも多くなっています。反対にた短期借入金が▲30億円減少していることから短期借入金でロールしていく金額を引き下げ、長期借入金で調達し直しています。少しでも安全性を確保する狙いがあるものと推察します。特に森トラスト・ホテルリート投資法人の業績が悪いことからこちらの投資口価格も伸びてこないことが遠因としてあるのではないでしょうか。
 ケネディクス商業リート投資法人は商業施設が主力アセットですが、物件の取得についても特に借入れ条件、投資法人債の発行状況について大きく変化が無いのでオフィスビル、レジデンス、商業施設ともにレンダーのJ-REITの融資姿勢については変化していないと考えられます。
 近隣の私募ファンド関係なんかは流石にホテルの取得については地方銀行は特にだいぶ及び腰となっているようです。(そもそも今の時期にホテルを取得するようなファンドはからくりがあるはずですが・・・。)不景気になると株式やJ-REITといった値動きがある投資商品を避け私募ファンドや不特法関係の投資に手を出す人が増えるのですが、そういった時期には詐欺商品の被害も出やすい時期ですのでご注意下さい。