2021年3月期決算のJ-REITのNAV倍率、含み益、稼働率の推移を見ていきます。
・NAV倍率
2021年3月のJ-REIT市場は、上旬は売りに押されたものの、その後は持ち直しました。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が講演で米長期金利の抑制に向けた具体策に言及しなかったことや、2月の米雇用統計が改善したこと、また大規模な追加経済対策成立を受けて米景気回復が加速するとの見方が強まったことなどを背景に、米長期金利が大きく上昇したことを警戒し、J-REIT市場は軟調な動きが続きました。ただ、月半ばにかけては、米金利上昇が一服したことを受けて投資家心理が上向き、買いが優勢になりました。後半は2月の東京都心のオフィス空室率は上昇しましたが、影響は限定的でした。利回り面での魅力に加え、コロナ後の景気回復に投資家の関心が移っており、国内でもコロナワクチンの接種が進むと、景気回復への期待が強まり、J-REIT市場が押し上げられる場面もありました。
NAV倍率は前期よりも回復してきています。賃料の減額や延滞が発生したり、稼働率や鑑定評価の減少などネガティブな情報が有ってもJ-REITの利回りはまだ割安と見られているところもありNAV倍率は1倍を超えている投資法人ばかりです。ワクチン接種後の経済回復を期待しホテル系J-REITの投資口を購入する投資家さんも存在するため投資口価格は高めで推移している状況です。
・含み益
含み益は鑑定評価額-帳簿価格で算定しています。含み益はポートフォリオ全体を見るとと順調に積みあがっています。鑑定評価額はバラつきがありますが、オフィスビルでは地方ほど減少してる状況です。純粋に毎期の減価償却費により帳簿価格が引き下げられ含み益として発生している状況です。気になるのはホテルの鑑定評価額の動向ですが、森トラスト総合リート投資法人は1棟ホテルを保有しています。
森トラスト総合リート投資法人の宿泊施設の鑑定評価
・ホテルオークラ神戸:17,300百万円→16,900百万円
2020年9月30日にテナントである㈱ホテルオークラ神戸と定期建物賃貸借契約を更新し賃貸借期間が2022年4月1日から2032年3月31日までとなりましたが固定賃料は減少しており、そこが鑑定評価額にも響いていると考えられます。また、周りのホテルマーケットの価格も崩れているためそっちの影響も受けているようです。
森トラスト総合リート投資法人の場合はむしろ旗艦物件の東京汐留ビルディングが2020年9月期に▲22,000百万円減少しましたがこちらの方が心配ですね。サブリース契約の賃料に連動する仕組みのマスターリース契約としているものの大口テナントの退去後のリーシング活動はあまりうまく進んでいない可能性が高いのではないでしょうか。現在のテナントは今月末で退去するので速やかにリーシングを進める必要があります。
また、森トラスト総合リート投資法人、ケネディクス商業リート投資法人も商業施設は微減しています。やはりスポーツクラブのような娯楽性の強いテナントが属している商業施設は新型コロナウイルスにより営業時間の制限や、そもそも来客数が減っていることもあり鑑定評価額は減少しています。しかし、どちらの投資法人も鑑定評価額が上昇している物件も発生しているので商業施設のテナント属性に影響も大きいようです。
・稼働率
3月・9月投資法人の稼働率は前期から更に減少傾向にあります。特にレジデンスが少ない投資法人ばかりなので稼働率が高いから安心という訳ではありません。個別の賃貸借契約により賃料が結果的には減少している事例が多いようです。森トラスト総合リート投資法人の場合はサブリース契約となっているのでサブリース先がしっかりリーシングできているのか詳細が不明なところが気になりますね。そもそもサブリース先が実テナントへいくらで賃貸しているかが分かってしまったらサブリースの意味が無い訳なので開示できないのは当然ですが・・・。グローバル・ワン不動産投資法人の場合はコロナウイルスにより現状テナントが退去する事態になっていないことが素晴らしいですね。とはいえ、2021年9月期までには運用物件の店舗テナント8つが確約するのではないかと見込んでいるようです。(全体からすると2%程度のダメージですが)
ジャパンリアルエステイト投資法人は特に地方のオフィスビルほど空室が目立ってます。尼崎フロントでは81.3%、四条烏丸で91.2%とだいぶ低い。東京23区でも大塚東池袋ビルで88.8%、ハモニータワーで90.7%と苦戦しています。今の時期は耐えるしかない状況だと思います。
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