2021年6月10日にムーディーズ・ジャパン㈱は、ジャパンリアルエステイト投資法人の発行体格付およびシニア無担保債務格付をA1からA2に格下げしたことを公表しました。格付見通しはネガティブから安定的に変更されています。

格付理由

 今回のジャパンリアルエステイト投資法人の格下げは、A1の格付対比で見劣りする財務レバレッジと、世界のREITセクターで最高位の格付であるシングルA格の類似比較企業との相対的な位置付けを反映している。国内の低金利環境により不動産の利回りは下押しされている。同時に、前回の市況低迷期から脱して以降、長年にわたり成長を続けていた東京のオフィス賃貸市場は、新型コロナウイルスの蔓延による影響で需要が圧迫されている。 こうした業況を背景に、の純有利子負債/EBITDA倍率はA1の格付対比で高い水準が続き、格付が同水準の類似企業に比べても弱い位置付けに留まるであろうと述べています。

 さらに、ジャパンリアルエステイト投資法人の有利子負債/総資産比率でみたギアリング指標は、格付がA2やA3の類似企業と近い水準にあり、このことも今回の格付アクションの要因となっています。

 一方で、ジャパンリアルエステイト投資法人がスポンサーである三菱地所㈱(A2:安定的)との協働体制を支えに、優良なポートフォリオの質や、有利な金利での資金調達力など、主要な信用力上の強みを長らく維持してきた実績も、ムーディーズは認識している。フィクストチャージカバレッジ指標は強固で、日本国内と同様に低金利環境の欧州の類似企業と比べても強い水準であるとも述べています。

 しかし、こうした信用力上の支えとなる要素は、ジャパンリアルエステイト投資法人をA1の格付の水準内にとどめるほど強固ではなく、財務レバレッジの継続的な高さを十分に相殺できないと、ムーディーズはみています。足元のオフィス需要の弱さや、リモートワークやハイブリッドワークといった働き方が今後一層普及するかに関する長期的な不確実性も、ムーディーズは考慮しています。

 ジャパンリアルエステイト投資法人の格付:A2は、
 ①優良かつ分散された東京のオフィス物件のポートフォリオ、
 ②三菱地所との協働体制を通じた強固な事業基盤、
 ③不動産開発リスクを負わず、海外の類似企業の多くと比べて事業リスクが低いこと、
 ④強固なフィクストチャージカバレッジ指標、
 ⑤潤沢な流動性を考慮している。

 また、長期の賃貸借契約による安定的な収益があることから、足元で低迷が続く市況の影響をある程度緩和することが出来る点も、ムーディーズは考慮している。一般的に賃貸借契約期間中の賃料は一定の水準に固定されており、収益の安定性に寄与していることは考慮しています。


格付け評価を上げるには

 安定的の見通しは、ジャパンリアルエステイト投資法人が今後12-18か月において、市場平均よりも高い 90%台後半のレンジで稼働率を維持し、底堅い収益を生むというムーディーズの想定を反映している。同社の優良な資産が、オフィス賃貸の市況低迷の影響を緩和するだろう。安定的の見通しはまた、ジャパンリアルエステイト投資法人が外部成長や資産の入替えを行ううえで、資産売却や手元資金の活用、エクイティ調達などを通じて、レバレッジを抑制していくとのムーディーズの見解も反映しています。

 オフィス市場の事業環境の弱さを踏まえると、向こう12-18カ月における格上げの可能性は低い。ただし、JRE が不動産ポートフォリオの規模と質を大幅に向上する一方で、財務レバレッジを低下させる場合、格上げを検討する可能性があるとも述べています。例えば、
 ①純有利子負債/EBITDA倍率が8倍未満にとどまる
 ②鑑定評価額ベースの有利子負債/総資産比率が30%未満で維持される
などすれば、格上げにつながる可能性がある。

 を挙げています。開示されている決算短信をベースにざっくりですが算定すると、①の純有利子負債/EBITDA倍率は2021年3月期は8.347倍程度、2020年9月で8.462倍と多少誤差はあれ、そんなに問題のある水準とは思えません。むしろ2019年9月が7.793倍、2020年3月が7.984倍と前年に比べれば上昇しています。②の鑑定評価額ベースの有利子負債/総資産比率が30%未満の方は2021年3月期は約32%程度。こちらはヒットしてますね。2019年以降から上昇傾向にあります。これは鑑定評価額が伸びなくなってきたためです。

 ジャパンリアルエステイト投資法人がA2になったということは他の投資法人だったら軒並みA2以下になりますよ。Moodysが気にしているのは日本のオフィスビルの将来性が大きく影響していると考えられます。リモートワーク・テレワークが進むとかなり保守的に仮定しているのだと思います。懸念しているのは臆病なレンダーがパニックを起こさないかということですね。