2021年6月15日にインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人の決算が発表されました。分配金は当初の予想一口当たり分配金が399円のところ420円で着地しました

物件売却益により分配金は上昇
20210619インベスコ・オフィスNOI推移

 2021年4月期は、「IBFプランニングビル」(東京都渋谷区、譲渡価格3,750百万円)について、同物件の2020年10月31日時点のテナント総数が2、延床面積が2,190.49㎡である準シングルテナントの中規模オフィスビルであり本投資法人の主たる投資対象ではないこと、2021年10月に主要テナントの退去が予定されており将来の減収リスクを排除できること、売却代金の一部を借入金の返済に充当することにより金利負担を軽減できること等を総合的に勘案し、継続保有及び譲渡の両面から慎重に検討を重ねた結果、投資法人の中長期的なポートフォリオの質向上及び財務基盤の強化、投資主価値の向上に寄与するものと判断し、2020年12月10日付で譲渡しました。
 運用面では、保有資産における空室部分の着実なリーシングの推進によって、当期末日時点のポートフォリオ全体の稼働率は97.0%となっています。また、稼働率の向上とともに、賃貸借契約更新時に賃料増額の可能性を追求することで、ポートフォリオ全体の収益の更なる向上に努めました。2021年4月期末日時点において投資法人が保有する運用資産のうち、不動産信託受益権は18物件(取得価格合計225,871百万円)、その総賃貸可能面積は296,647.98㎡となっています。上記運用の結果、2021年4月期の業績は、営業収益8,755百万円、営業利益4,185百万円、経常利益3,700百万円、当期純利益3,698百万円となりました。結局最後まで物件の資産規模を拡大せずに終わりました。オフィスの稼働率も97%と減少しているため資産運用会社としては諦めの気持ちなのではないでしょうか。


2021年4月期の格付評価は何故か変更無し
20210619インベスコ・オフィスLTV・DSCR推移

 インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人は財務戦略として、中長期的な安定的収益の確保及び資産価値の着実な向上のため、安定的かつ健全な財務運営を行うことを基本方針としています。2021年4月期は2020年11月30日に返済期限を迎えた短期借入金500百万円及び2020年11月30日に返済期限を迎えた長期借入金7,600百万円の返済資金に充当するため、2020年11月30日付で8,100百万円の借入れを行いました。また、2021年4月30日に返済期限を迎えた長期借入金6,300百万円の返済資金に充当するため、2021年4月30日付で6,300百万円の借入れを行いました。また、2021年5月31日に返済期限を迎えた長期借入金6,980百万円のうち2,120百万円について、上記の「IBFプランニングビル」の売却代金の一部を原資として、2021年1月29日に期限前返済を行いました。
 この結果、2021年4期末時点の有利子負債残高は124,160百万円となり、うち、長期借入金は106,760百万円(1年以内に返済予定の長期借入金30,910百万円を含む。)、投資法人債は17,400百万円(1年以内に償還予定の投資法人債1,800百万円を含む。)となりました。LTVは49.3%となっています。2021年4月期末時点の格付機関から得ている格付は以下の通りです。
・㈱日本格付研究所(JCR)、発行体格付:AA-、格付の見通し:安定的

 確かにLTVは前期と同水準でDSCRは上がっているため支払利息負担割合は減少していますが、2021年6月17日にスターウッド・キャピタル・グループのTOBが不成立となり、インベスコグループのTOBが成立することとなりました。2021年4月期のJCR格付けにはこういった動きは反映されていないのですがこれは本当に良いのか?という疑問が有ります。投資家さんだけでなくレンダーもこの点については気が気ではなかったのではないでしょうか。スターウッド・キャピタル・グループのTOBが成立していたとして、返済を放り出して担保物件だけ押し付けられる可能性も0ではなかったはずです。その点では将来性はかなり不透明だと予想できると思うのすがそれでもAA-評価をつけるJCRの考えがよく分かりません。


スターウッドは退けるも上場廃止 

 インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人のスポンサーの関連会社であるIREIOJ合同会社及びMARIOJ合同会社により本投資法人の発行済投資口の全てを対象とする公開買付けが以下の条件により開始されました。インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人は本公開買付けに対し賛同しているため、投資口を保有する投資主の皆様に対して本公開買付けに応募することを推奨する旨の意見を表明しています。
 ⚫買付期間:2021年6月18日(金)から2021年7月27日(火)まで
 ⚫買付価格:1口あたり22,750円
 ⚫公開買付代理人:SMBC日興証券株式会社

 スポンサーのインベスコグループは全ての投資口取得を予定しているためご自身の資産運用ポートフォリオの中にインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人の投資口が含まれている方は新たなポートフォリオ構築を考える必要があります。私個人としてもインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人は少数精鋭の物件構築で成長していくJ-REITであると期待をしていたので非常に残念です。