2021年4月期決算のJ-REITのNAV倍率、含み益、稼働率の推移を見ていきます。

・NAV倍率
20210701J-REIT4.10月決算NAV倍率推移
20210701J-REIT4.10月決算NAV倍率推移2
 
 2021年4月前半のJ-REIT市場は、月初は下落したものの、以降は堅調な動きが継続しました。高値警戒感や長期金利の上昇を受け、月初は続落して始まりました。バイデン米大統領が発表した巨額のインフラ投資計画や良好な米雇用統計を好感し、株式市場とともにJ-REIT市場も買いが優勢になりました。景気回復期待から投資家心理が上向く中、株式市場に比べた出遅れ感も手伝い、9日には東証REIT指数は2,050ポイントを上抜けました。月半ばにかけては2,050ポイントを挟んだ一進一退の動きが続きました。

 J-REITの予想分配金利回りは3.5%付近まで低下しているものの、分配金利回りの高さに着目した買いは根強そうです。コロナ禍前の昨年2月には予想分配金利回りは3.4%台前半まで低下しましたが、この水準まで低下した場合には、東証REIT指数は2,100 ポイントを若干上回ることになります。また、株式市場の上値が重くなるとJ-REIT市場に資金が向かうことも想定されます。4月のJ-REIT買入れはありませんでした。

 NAV倍率よりもスターウッド追い払ったものの上場廃止することになったインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人の今後が気になりますね。個人的にはまた復活して頂きたいところですが、外部成長もろくになく物件も用意することができなかったスポンサーでは復活しても投機銘柄となってしまう気がするのでJ-REITを撤退することはある意味で有意義なのかもしれません。

 他の投資法人のNAV倍率についてはケネディクス・オフィス投資法人、NTT都市開発リート投資法人、いちごオフィスリート投資法人といったオフィス系REITが1倍を超えてきました。足元の稼働率は悪いもののオフィスの需要は戻ってくると考えている投資家さんは多いようです。中には逆張りで購入している投資家さんもいると思いますが、運用実績が長く物件取得を定期的に行い成長していく姿勢を見せている投資法人であるほど人気が戻るのは早いと思います。
 

・含み益
20210701J-REIT4.10月決算含み益推移
20210701J-REIT4.10月決算含み益推移2

 含み益は鑑定評価額-帳簿価格で算定しています。各投資法人とも物件のバラつきが大きいですね。コロナウイルス関連でダメージを受けやすいホテルが主力の星野リゾート・リート投資法人は前期に続き鑑定評価額を下げている物件が多いです。その他オフィスビルや商業施設でも稼働率の減少から鑑定評価額に影響を与えています。いちごオフィスリート投資法人は前期から1棟増えているはずなのですが含み益が減少しています。商業施設であるコナミスポーツクラブ和泉府中の下落は大きく1,440百万円から866百万円に減少しています。スポーツクラブのようなレジャー性の強いテナントは大ダメージを受けているためそれがもろに鑑定評価額として表れてきています。

 オフィスであるのウィン第2五反田ビルも3,570百万円から3,510百万円に減少しています。こちらは100%あった稼働率が88.7%にまで減少しており鑑定評価を下げています。これはミスなのかいちご神田錦町ビルは稼働率69.2%なのですが、鑑定評価額は下がっていないんですよね。これがミスでないとすると急遽の解約であった可能性が高いですね。いちごオフィスリート投資法人の場合は物件の規模が小ぶりなのですが、テナント数が少ない物件が多いので1件の解約で稼働率が大きく下がってしまいます。入居しても会社の規模が小さいため不況時には耐えられず退去することも少なくありません。反対により大きなビルから退去することを検討しているテナント候補にアプローチできれば良いので、ケネディクス、ヒューリックのビルのテナントにアクションを起こしていくと良いのではないでしょうか。まあ、レピュテーションリスクはありますけどね。


・稼働率
20210701J-REIT4.10月決算稼働率推移
20210701J-REIT4.10月決算稼働率推移2

 4月・10月投資法人の稼働率ですが、こちらも前期から更に減少傾向にあります。オフィスビルの稼働率がかなりバラつきがあります。ケネディクス・オフィス投資法人では新日本橋駅前ビルが67.2%、KDX西五反田ビルが74.8%、KDX八王子ビル85.5%これらが特に低い稼働率ですね。しかし、ケネディクス・オフィス投資法人の場合は2021年4月期になり一気に稼働率を100%にしている物件も複数あります。(具体的には東伸24ビル、KDX御茶ノ水ビル、新都心丸善ビル、KDX新宿ビル等)リーシングについてかなり力を入れていることが伺えます。

 NTT都市開発リート投資法人ではこちらもオフィスで、アーバンネット西五反田NKビルが24.4%、上野トーセイビル68.3%が飛び向けて悪いですね。アーバンネット西五反田NKビルの24.4%はフリーレントを長くするなどの工夫しなければかなり難しいと思います。それにしてもオフィスでは五反田エリアでの退去が進んでいるようですね。移転を考える企業や、本社への機能の集約などによる組織改編を理由に退去するテナントが多いようです。賃料ギャップも差が小さくなっていることから競合の物件も多くなってきているのでオフィスビル全体として収益の成長性は難しくなってきているようです。

 積水ハウス・リート投資法人は少数ですがオフィスビルを保有しています。こちらのオフィスビルはかなり優秀で目立つのは赤坂ガーデンシティの95.9%くらいです。好立地の大規模オフィスの方が実は安定しているということが実態となっています。積水ハウス・リート投資法人の場合はむしろプライムメゾン三田綱町のような稼働率が80%台になっているレジデンスを補強した方が良いですね。それでも賃料を下げて入居させるまでの規模ではないので条件を下げる必要は必ずしもないですけどね。