2021年7月1日に国税庁が、相続税や贈与税の算定基準となる2021年分の路線価(1月1日時点)を発表しました。


 標準宅地の対前年変動率は、全国平均で0・5%減となり、6年ぶりに下落しました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、大都市圏や観光地でインバウンド(訪日外国人客)が縮小したことや、飲食店への営業時間短縮要請が続いたことなどが大きく影響しました。

 都道府県別で下落したのは39都府県で、昨年の26県から13増増加し、下落率が最大だったのは静岡(1.6%)で、インバウンド需要が縮小した東京(1.1%)や大阪(0.9%)もマイナスに転じました。最も上昇率が大きかったのは、仙台市青葉区中央1丁目・青葉通りで、3.8%上昇。以下、千葉市中央区富士見2丁目・千葉駅前大通りの3.5%上昇、宇都宮市宮みらい・宇都宮駅東口駅前ロータリーの3.4%上昇と続いています。

 そんな中でも路線価の路線価№1は36年連続で東京都中央区銀座5丁目の文具店「鳩居堂」前の銀座中央通りで、1平方メートル当たり前年比7・0%減の4272万円となりましたが、9年ぶりに下落に転じました。2位は大阪市北区角田町・御堂筋で同1,976万円(8.5%下落)、3位は横浜市西区南幸1丁目・横浜駅西口バスターミナル前通りで、同1,608万円(3.1%上昇)となっています。

 路線価なので直接J-REITへの影響は無いと考えられますが、「路線価が下落」しているというだけで不動産に関する不安感で右往左往することは避けて欲しいですね。J-REIT・私募ファンドを含んだ、投資用不動産の期待利回りはオフィスビルについてはほぼ変わらず東京都は3.5%~4.2%程度の利回りが期待されています。全国ベースでは4.4%~5.5%とこちらも従来から変わらない期待が寄せられています。

 反対にレジデンスは全国的に期待利回りが減少している傾向にあります。これはワンルームタイプか、ファミリータイプかに寄らず減少しているので投資用不動産は安定性よりも収益性を重んじる投資家さんの方が多いと感じています。J-REITに特化して述べると、レジデンスに逃げていた投資家さんがオフィスビルや商業施設に戻ってきていると考えられます。

 日本不動産研究所のアンケートでは今後1年間の不動産投資に対する考えは「新規投資を積極的に行う」と回答している不動産投資家が94%と以前として高く世界的な金融緩和を背景に積極的な姿勢が維持されているというデータもありますから、オフィスビル・レジデンスの取引価格は引き続き高い水準で取引されると予想します。私募ファンド中心に物件の取得が多くなっていくものと考えられます。

 また、日本不動産研究所のアンケートによると投資家さんの中には宿泊施設に対する期待利回りが上昇しているというデータもあります。さすがに宿泊施設は民泊を運営している人でない限りは手をだすことが難しいのでそれをホテル系J-REITに望む投資家さんも増えそうです。