2021年5月期決算のJ-REITの安全性について分析しました。

・有利子負債利子率
20210806J-REIT5.11月決算有利子負債利子率
20210806J-REIT5.11月決算有利子負債利子率2

 5月・11月決算投資法人も有利子負債利子率の推移は順調に減少しています。コロナやオリンピックなど関係無しで、金融機関のJ-REITに対する姿勢には変更は無いようです。それよりもレンダーは仮想通貨など他のサービスによる影響の方が大きく、今までの事業である融資で取引を絞るということはあまり関係無いようです。最も低いのは日本プロロジスリート投資法人のレンダーポートフォリオは三井住友銀行、三菱UFJ銀行を中心に15社の金融機関で構成されています。有利子負債シェア第5位に日本政策投資銀行があるため金融機関からの信用利用力が高いということが解ります。
 次いで、低いのは大和証券オフィス投資法人です。こちらは三井住友銀行、三井住友信託銀行を中心に23社の金融機関から借入れが行われています。有利子負債シェア第3位に日本政策投資銀行がいます。また、東京海上日動火災保険、太陽生命保険や富国生命保険といった生命保険会社からの借入れも行っています。こういった生命保険会社からは成績が良いだけでは当然借りれないのでスポンサーの信用力がものを言うようになります。しかし、これが金利(正確にはスプレッド)といった面で跳ね返ってくる訳ではないです。しかし、他の借入れていない金融機関向けに「当投資法人は信用力が高いですよ」というアピールになるため借入れる価値は十分あると思います。最近ではグリーンボンドという形でJCR格付とサスティナビリティへの取組みを取り入れた投資法人債の発行が進んでいます。投資法人債を金融機関に引き受けてもらう場合は利率は借入金る時の金利よりも高くなるはずですが、最近では借入金利とほぼ遜色無い条件で引き受けてもらえているのは良い状況ですね。


・LTV(有利子負債比率)
20210806J-REIT5.11月決算LTV
20210806J-REIT5.11月決算LTV2

 LTVは有利子負債÷総資産で算出しています。5月・11月決算投資法人はどこも自身のターゲットとしているLTVの範囲で推移しています。ユナイテッド・アーバン投資法人、アクティビア・プロパティーズ投資法人は徐々にLTVが上昇傾向にあります。昨今のオフィスビルが今後戻らないのではないかという勝手なイメージやインターネットの記事で公募増資行っても資金が集まりにくいことが予想されています。来期、来々期くらいまでは有利子負債での調達がメインとなってくるため今後も上昇していくと考えられますが、46%台の範囲で留まると思います。ユナイテッド・アーバン投資法人の場合はレジデンスも約25棟所有しているためレジデンスの取得ということに絞ることで公募増資を行っても狙った資金の調達はできると思います。大江戸温泉リート投資法人は運用物件がホテルということもあり、LTVは38.4%とJ-REITの中では低い水準ですが、スポンサーもレジャーが強い業種ということもあり、借入を増やすのは難しいと考えられます。流石にレンダーも既存の借入金の借換えや延長については認めると思いますが、新規の借入れ、特に物件取得の借入れについては難しいと思います。大江戸温泉リート投資法人のLTVはこのまましばらくは維持もしくは更に減少していく可能性が高いと考えています。しかし、レンダーからの評価は変わらないのではないでしょうか。
 物流系J-REITの日本プロロジスリート投資法人、SOSiLA物流リート投資法人のLTVは総じて低めで推移しています。SOSiLA物流リート投資法人前期から34.9%→37.9%と大幅に増加しているようですが、これは大型物流施設を取得したことによるものです。しかし、37.9%はまだまだ低い水準なのです。資産規模を拡大していく時期なので早く出資の払戻し無しで分配金を支払えるようになって頂きたいですね。