随分と前のプレスリリースになりますが、野村不動産マスターファンド投資法人がS&P格付けをひっそりと取り下げました。直近の格付評価は長期発行体格付:A(安定的)、短期発行体格付:A-1となっています。

 現状、㈱格付投資情報センター(R&I)、㈱日本格付研究所(JCR)は引き続き継続していく予定ということなので投資法人債発行にはとりたてて影響は無さそうです。R&IとJCRから取得している現時点の格付けは以下の通りです。
・㈱格付投資情報センター(R&I)、発行体格付:AA-、格付の見通し:安定的
・㈱日本格付研究所(JCR)、長期発行体格付:AA、格付の見通し:安定的 

 格付で問題なのは投資法人債を引き受けてくれる金融機関がどういった評価を下すかということ、実務ベースではどこであっても発行体格付評価が「A」以上というところが多いという認識です。(流石にAM会社で働らいていても金融機関からこの格付をどう利用しているかについては話してくれません)この場合、困るのはS&PとJCRで格付評価額異なってしまった場合、もちろん引受候補金融機関に対してはAM会社のIR・財務部門の社員が説明しますが、そういった説明よりも慎重な評価として出された格付評価会社の格付結果のみで判断してしまっているという印象があります。

 直近決算ベースでは収益性推移状況は以下のとおり。
20210818野村不動産マスターファンド投資法人NOI推移


 続いてLTVとDSCRの推移状況はこちら。
20210818野村不動産マスターファンド投資法人LTV・DSCR推移
 オフィスビル・商業施設・レジデンス・物流施設と多様なアセットによりNOIは安定的に上昇していますし、LTVは43%台とJ-REITでは平均よりもやや低い水準でDSCRは10%台となり支払利息の負担割合は小さくなっています。S&Pの格付けが下がることは考え辛いと考えます。よって、S&Pの格付け取り下げはネガティブな理由ではなく、単純に野村不動産マスターファンド投資法人から見て利用価値が無くなったと見た方が良いと思います。