2021年9月9日にSBIホールディングスが新生銀行に対し、1株2000円で株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表しました。これにより2021年9月10日以降の株価は大きく上昇しています。

 新生銀行は、銀行事業では住宅ローンなど個人向けを主力に据え、預金金利の引き上げやATM(現金自動預け払い機)の手数料無料化で若年層の取り込みを図ってきました。しかし、前身の長銀時代に預金を集めてこなかったこともあり、メガバンクとの差は埋まっていません。2017年3月期以降の連結最終利益は、各期500億円前後で推移しています。個人向けで、海外で需要の多い消費者ローンを主力商品としましたが、社会問題化した過払い利息の返還請求が相次いで損失計上を迫られるなど、成長は頭打ち状態です。

 新生銀行は過去に受けた公的資金の投入を受けましたが、公的資金の対価となった優先株
が転換されておらずまだ、政府に約3,500億円を返済する必要があります。政府が注入額を回収するには、株価が足元の約1,450円から7,450円程度まで上昇してから売却する必要があると予想されています。

 2008年の「リーマン・ショック」では、不動産融資の焦げ付きで財務状況が悪化しました。2009年には、あおぞら銀と経営統合で合意していましが、主導権を巡って経営陣が対立し、2010年に交渉が破談となりました。

 私の新生銀行の評価は、「手を付けるのも早く、逃げ足も早い」というのが感想です。J-REITではヘルスケア施設を運用することが一般的ではない2005年、2006年から(ヘルスケア施設という呼び方よりもシニア物件という呼び方が一般的だった)ころから老人ホーム等の介護施設の開発や運用については前向きに検討してもらったことがあります。シンジケートローンのメンバーとしての立場でも淡々としていたという印象で、むしろ契約書の押印や、金消契約の作成についてもスピードは他の銀行よりも2~3営業日早かったです。

 リーマンショックに突入してた2006年当時、私はJ-REITにとっては良い金融機関だと本当に思っていました。2006年に入って中盤くらいから新生銀行は真っ先に不動産購入時の融資が一気に厳しくなりました。既存のローンで借入期間はまだ残っているのにやたらと訪問してくるようになり返済を迫ってくるようになりました。まだ日系のメガバンクや信託銀行が耐えてくれていましたが、シンジケートローンのメンバーであっても他のメンバーよりも返済を優先して欲しいなどと言うようになりました。シンジケートローンの返済は各行の借入額に応じて返済額が決まっており、第一そのシンジケート団のエージェント(リーダー)の了承も得ていないのにそんなこと言うなんてさすが外資は自己中だと思ったものです。(当然あおぞら銀行もです)

 もう一つあります。新生銀行はインフラファンドや新電力業界の創設時にもどこよりも好条件を提示してきました。メガバンクは通常の電気の購入時に充てるため借入れをお願いしています。そのため地方に建設することが多くなる発電所に地方銀行に借入れをお願いする機会が多くなります。地方銀行はインフラファンドや新電力業界は新しすぎるため了承を貰うことが難しいこともありました。そんな中特段エリアにこだわりの無い新生銀行を利用した企業も多かったと思います。2018年の北海道胆振東部地震が起こるまでは。この地震は9月に発生したものですが、その翌月10月には東京の本社を置く企業を中心に返済を迫ってくるようになりましたね。

 これら2つの話し以前に働いていた会社で経験した話です。震災やコロナなどが発生してもこれが数字として表れてくるのは早くても翌月です。その後、以後の震災への対応や経営方針を転換するか否かが固まるのは発生してから2ヶ月くらいかと思います。新生銀行はあおぞら銀行は数字が経営陣に届く前に、地方の情報をしっかりと東京に本社を置く企業が支援を実感する前に返済を迫るという賢い立ち回りをされていました。

 SBIホールディングスは第四のメガバンク構想の母体を新生銀行でと考えているのだと思いますが、行風というか社風が当然メガバンクでは無いのでSBIホールディングスの人間が相当教育しないと先は長いと思います。J-REITやインフラファンドでも新生銀行の依存度が高めな投資法人が存在するので流石に買収されたからといって不動産から手を引くようなことは無いと思いますが、SBIが新生銀行評価している点が個人向け商品なので組織再編を理由に融資の引き上げ迫ってくる可能性があります。資産運用会社の方へ今のうちにレンダーフォーメーションにおける新生銀行の比率を下げることをお勧めします。