2021年8月期決算のJ-REITの収益性について分析しました。

・NOI利回り
20211101J-REIT(2・8月決算)NOI利回り推移
20211101J-REIT(2・8月決算)NOI利回り推移2

 NOI利回りのNOIは賃貸事業収入から賃貸事業費用を差し引き、減価償却費をプラスすることで算出しています。2月・8月決算の投資法人はオフィスビルを主力としている投資法人はNOI利回りが減少しています。テナントの新型コロナウイルスによる経営悪化により賃料減額を受け入れたこと、実際に退去したことにより稼働率の減少、賃料の減少が主な原因です。何度か申し上げていますが、大規模オフィスビルや立地・スペックで優れているオフィスビルよりも中小規模のオフィスビルの方が稼働率の減少が進んでいるという印象です。オリックス不動産投資法人、ヒューリックリート投資法人、大和ハウスリート投資法人、ザイマックス・リート投資法人は高スペックの物件もありますが、想定よりもリーシングに時間が掛かっているというのが率直な感想ではないでしょうか。この中では、ヒューリックリート投資法人が比較的築浅であるためやや有利と言えそうです。オリックス不動産投資法人はややリーシング戦略で後れをとっています。賃料減額してしまうとNOIが減少するため収益性が減少してしまうこと、保有物件の鑑定評価額が減少することで物件売却時に売却益にマイナスな影響を与える可能性があることを懸念したのかこれまで通り(コロナ禍前)の賃料水準でリーシングを行っていたことが原因のようです。ただ、オリックス不動産投資法人は決算説明会資料の中で今後は稼働率回復を重視したリーシングを行うことを表明しているため徐々に回復してくるものと考えられます。スポンサーが開発した物件を取得することが多い投資法人がいる中で、オリックス不動産投資法人、物件の価値を重視して、第三者からの取得も前向きに検討してくれている投資法人なので回復を期待したいですね。

 意外なことに日本都市ファンド投資法人、福岡リート投資法人は元気よりも減少しているものの、収益は思いの他悪くありません。各物件でテナントポートフォリオに構築を本腰を入れたことが効果的に表れているのだと思います。もちろんテナント自身がコロナ禍に合わせて事業展開を見直していることも重要です。GLP投資法人、三菱地所物流リート投資法人、ラサールロジポート投資法人の物流系J-REIT三人衆もNOI利回りは減少していますが、こちらは収益よりも取得価格が高いことが原因です。


・当期純利益率
20211101J-REIT(2・8月決算)当期純利益率推移
20211101J-REIT(2・8月決算)当期純利益率推移2

 2月・8月決算投資法人の当期純利益率はグラフの通りです。森トラスト・ホテルリート投資法人は大きく上昇しています。こちらは営業収入が21億円と賃貸収入自体が過去2期よりも大きく上昇したことによるもの、コートヤード・バイ・マリオット 東京ステーションの準共有持分5.5%の売却による売却益261百万円の影響も大きいです。コートヤード・バイ・マリオット東京ステーションの売却先はスポンサーの森トラスト㈱なのでオペレーターの戦略を損なうことも、物件売却時に足を引っ張ることも少ないと思います。まあ、売却する可能性自体が低いですけど。

 もう一つ前期より大幅に上昇しているのがOneリート投資法人です。こちらは前期に売却を決定したfab南大沢を減損処理したことによる減損損失が802百万円が計上されていたことによるものです。また、そのfab南大沢の他、湯島ファーストジェネシスビル、36山京ビルの3棟を2021年8月期に同一の相手先に売却したことで879百万円の売却益を計上しています。このような特殊事例がなければOneリート投資法人の当期純利益率は44-46%の水準なので悪いくない水準です。

 日本都市ファンド投資法人は大きな売却損1,767百万円を計上しており、当期純利益は約5.7%減少しています。直ぐに売らなければならないほど悪い物件はありませんが、今物件を売却してもコロナのせいにできるので細かいところを突かれないだろうという考えも見え隠れしますが、ポートフォリオを再構成するという大義名分を使えるうちに売却することが難しい物件を一気に売っていまおうという判断は悪くないと思います。