2021年9月期決算のJ-REITのNAV倍率、含み益、稼働率の推移を見ていきます。

・NAV倍率
20211203J-REIT(3月・9月決算)NAV倍率推移
20211203J-REIT(3月・9月決算)NAV倍率推移2

 2021年9 月前半のJ-REIT市場は、やや軟調な動きになりました。菅首相の退陣表明を受け、日本の政治の閉塞感が打破されるとの期待や新しい首相のもとで打ち出される経済対策への期待が高まる中、米株に比べ出遅れ感のある日本株への資金流入が続いたことや、J-REITの公募増資(PO)の発表が相次いでいることなども重しになり、J-REIT市場は軟調な展開が続きました。国内の新型コロナウイルスの新規感染者数の鈍化が見られる中、値ごろ感からの買いも入りましたが、月半ばにかけてもやや売りに押されました。
 東京都心のオフィス空室率の上昇が、9月、10月と2か月連続で鈍化していることに加え、J-REITの分配金が安定していることは安心材料です。新型コロナのワクチン接種が進展し、新規感染者数が減少する中、景気回復への根強い期待が、市場を下支えするとみられます。なお、9日銀による9月のJ-REIT買入れはありませんでした。
 NAV倍率で見ると、ジャパンリアルエステイト投資法人とケネディクス商業リート投資法人は上昇傾向にあります。ケネディクス商業リート投資法人は商業施設でありながらコロナの影響も少なく高稼働率ということもあり、格付機関からの評価も高いです。毎期物件の売却・取得を続けており、成長が見えやすいといったところの評価も高いようです。反対に下げているのは森トラスト総合リート投資法人とグローバル・ワン不動産投資法人。稼働率の減少のインパクトが強いのですが、森トラスト総合リート投資法人は1倍をキープしています。この2つの投資法人はリーシングが一旦落ち着いてそれでも投資口価格が上がらないようであれば自社投資口の取得を考えてもよいかもしれませんね。


・含み益
20211203J-REIT(3月・9月決算)含み益推移
20211203J-REIT(3月・9月決算)含み益推移2

 含み益は鑑定評価額-帳簿価格で算定しています。大和証券リビング投資法人の稼働率は減少傾向にあるものの意外にもレジデンスレジデンスの鑑定評価額は上昇しています。保有期間が長いプロスペクト系の物件も前期と比べ上昇しています。路線価や高くなるということは考え辛いのでリーシングの結果が鑑定評価額直結しているものと考えられます。しかし、大和証券リビング投資法人の場合先日述べて通りですが、鑑定評価額が簿価割れを起こしている物件が多数散見されます。
必ずという訳ではもちろんありませが、鑑定評価額が低いということは売却価格も低くなる可能性が高いため物件の入替えが難しくなります。一般的な事例としてそういった場合は売却益が出る物件も一緒に売却することで売却益と売却損を相殺することで物件の入替えを行います。そうなると引き続き持っているだけで収益になり得た物件まで処分してしまうことになるため良い方法とは言えません。なので物件取得価格決定は非常に重要です。
 合併で取得した物件もあるのでこれが悩みどころですね。当時は合併することで安全性や成長性を確保することが重要だったと思います。不動産マーケットも上昇していくという絵を描いていたのでしょうが思ったよりも価格が伸びないという点が誤算だったのだと思います。今後も物件入替えが続くと考えられるので物件譲渡ののプレスリリースは注意してい見ていく必要がありそうです。森トラスト総合リート投資法人は東京汐留ビルディングの売却があったため前期から含み益も減少しています。


・稼働率
20211203J-REIT(3月・9月決算)稼働率推移
20211203J-REIT(3月・9月決算)稼働率推移2

 3月・9月投資法人の稼働率も減少傾向にあります。森トラスト総合リート投資法人、ジャパンリアルエステイト投資法人、グローバル・ワン不動産投資法人ともにオフィスビルは前期から減少しています。3投資法人もリーシングに遅れが生じています。森トラスト総合リート投資法人とグローバル・ワン不動産投資法人では今後も退去が予定されている物件があるため2022年3月期はかなり正念場になりそうな予感です。

森トラスト総合リート投資法人

 新橋駅前MTRビル・・・⼀棟借りテナントが2021年12⽉末をもって退去予定
 新横浜TECHビル・・・ 物件全体の約55%を占める主要テナントが2021年12⽉末までに⼀部区画を残し退去予定
 
グローバル・ワン不動産投資法人

 豊洲プライムスクエア・・・2022年2月には稼働率90.1%に回復することは確定済み。
 横浜プラザビル、明治安田生命さいたま新都心ビル・・・解約発生するも、うち約半分は2021年11月段階で埋戻し完了。残り半分をどするか?

 運用的には潰れる的なヤバさはないですが、リーシングが遅れれば稼働率がポートフォリオ全体で80%台に落ち込むことも有りうるので投資家さんが流石に離れていくと予想されます。現に投資口価格は下落傾向にあります。プレスリリースや開示後の動きを見てみるとグローバル・ワン不動産投資法人の方がリーシングの進捗が上手くいっているようです。テナント候補のニーズの半分以上が拠点集約・拡張といったもの。そりゃ拠点に集約するなら広くて利便性の高いオフィスが必要な訳で、必然的にテナントが中小企業→大企業に振るいに掛けられるという訳です。グローバル・ワン不動産投資法人にとってはオフィスビルの解約・リーシングはテナントの質を高めるという狙いがあるようです。