2021年11月期決算のJ-REITのNAV倍率、含み益、稼働率の推移を見ていきます。

・NAV倍率
20220203J-REIT(5・11月決算)NAV倍率推移
20220203J-REIT(5・11月決算)NAV倍率推移2

 2021年11月前半のJ-REIT市場は、レンジ内でのもみ合いの中、やや売りに押されました。衆院選で自民党が単独過半数を確保し、政治不安が後退したことを受け、株式市場に資金が向かい、月初はやや軟調な動きになりました。その後は、新型コロナウイルスの新規感染者が減少する中、経済活動の正常化への期待から、堅調な動きになりました。ただ、中国や米国のインフレ圧力の高まりを警戒し、10日には約1か月ぶりの安値まで下落しました。押し目買いからやや値を戻し、11月半ばにかけては一進一退の動きが続きました。
 今後は一進一退の中、上昇余地を探る展開となりました。2021年11月は新型コロナの新規感染が抑えられていたことや、行動制限の緩和が進む中、経済活動の正常化への期待が市場を支えていたと見ることができそうです。GoToトラベル再開などへの期待も下支えしていたと思われます。
 上記のようなマーケットの中、NAV倍率を見ると1倍を切る銘柄が多くなりましたね。大和証券オフィス投資法人はリーシングが好調だったこともあり1倍以上は妥当ではないでしょうか。奇跡の稼働率0%のままで決算を迎えたユナイテッド・アーバン投資法人は0.879倍と大きく落ち込んでいます。人気は物流系J-REITの日本プロロジスリート投資法人、SOSiLA物流リート投資法人の2社ですね。優に1倍を超えており、コロナ禍においては物流系J-REITが中心になっていくと考えられます。
 平和不動産リート投資法人はレジデンスの安定性を武器に1倍近辺を引き続き粘る展開になりそうです。大江戸温泉リート投資法人はローン・スターの動向を伺ってからの判断になると思うので急激な回復は望み薄といったところだと思います。ローン・スターが大江戸温泉物語㈱をコロナ明けまでただ耐えることを決断するのか、投資法人への宿泊施設売却を進めていくのか決めかねている状況ではないでしょうか。


・含み益
20220203J-REIT(5・11月決算)含み益推移
20220203J-REIT(5・11月決算)含み益推移2

 含み益は鑑定評価額-帳簿価格で算定しています。ユナイテッド・アーバン投資法人の減損によりユナイテッド・アーバン投資法人の含み益が減少しています。やっぱり含み益が突出しているのは日本プロロジスリート投資法人とSOSiLA物流リート投資法人です。物流施設は相変わらず評価が高いので2021年11月期もその評価が落ちることはありませんでした。近々では株価に引きずられJ-REIT各社の投資口価格も大きく下落しているので物流系J-REITの投資口を取得するには良い時期かと思います。投資口価格が大きく変動してもそれと鑑定評価額は連動していないということ(不動産マーケットが値崩れを起こしている訳ではない)。コロナ禍において不動産だけ無事ということはありませんが、毎期分配金を拠出できていますので他の投資商品に比べれば良い方だと思います。
 大江戸温泉リート投資法人は各ホテルは引き続き厳しい状態にさらされています。本来であればこちらの方が減損を食らいそうなものですが・・・。オペレーターが頑張って運営しているようです。
 商業施設系の阪急阪神リート投資法人は思ったほど悪くなくこちらもポートフォリオ全体で減価償却費以上の含み益は維持しているといった感じです。2021年11月は一気に外食テナントで回復が見られたことや、衣料系のテナントでは外出機会の機会が回復したことや気温低下もあり冬物商材の動きが活発になったということもプラスに働いているようです。
 

・稼働率
20220203J-REIT(5・11月決算)稼働率推移
20220203J-REIT(5・11月決算)稼働率推移2

 5月・11月投資法人の稼働率は大和証券オフィス投資法人、阪急阪神リート投資法人、平和不動産リート投資法人は前期よりも上昇しています。大和証券オフィス投資法人はオフィス系J-REITの中ではリーシングが上手くいっています。秘密は決算説明会資料の19ページに記載されている強化策です。Daiwaリバーゲートでは都心部からのアクセスが良好で、総合的に高い設備水準の大型ビルでありながら、中心部のビルと比較し、相対的に割安感があることをマーケットに訴求し、約半年間で、約2,000坪の埋め戻しに成功しています。
 新宿マインズタワーでは連続階を含む複数フロアでの募集であることから、集約、拡張、縮小等様々な面積ニーズに対応できることをPR、併せて新宿駅直結の大規模ビルであることの希少性を改めて市場に訴求することで、数フロアの埋め戻しに成功しました。
 Daiwa赤坂ビルではセットアップオフィスでの誘致に成功するなど、2021年11月末の稼働率は82.0%の実績。その後、別区画(約160坪)の解約到来により、再度、稼働率が低下することが見込まれている為、今期も継続してリーシング強化物件に。また、2022年5月期はDaiwa SHIBUYA EDGE、神田橋PR-EXのリーシングを強化することを述べておりかなり計画的にリーシング活動を行っていることが見られます。基本となるベースはフリーレント期間の延長や仲介会社のコントロールなので他の投資法人と大きく変わる訳ではありません。周辺地域の競合ビルとの比較の中にアピールするポイントを見出したり、既存テナントへの増床提案などが上手いところだと思います。他の資産運用会社でもマネできるところがあるのではないでしょうか。私はもうマネしてます。
 平和不動産リート投資法人はレジデンスが多いので2-3月は入居者の入替えが激しい時期になります。蔓防が適用されているのでリーシングの足を引っ張られることになりそうですが、引き続き頑張って欲しいところです。