2022年2月期決算のJ-REITのNAV倍率、含み益、稼働率の推移を見ていきます。
 
・NAV倍率
20220504J-REIT(2月・8月決算)NAV倍率推移
20220504J-REIT(2月・8月決算)NAV倍率推移2

 2022年2月前半のJ-REIT市場は売りに押される展開になりました。月初は利益確定売りに押されましたが、その後は相対的に高い分配金利回りに着目した買いなども入り、一進一退の動きが続きました。ただ、米雇用者数が予想を上回る増加となり、米金融当局による早期の金融引締めへの警戒が一段と強まったことに加え、長期金利の上昇や公募増資(PO)の発表などを受け、売りが優勢になりました。一旦大きく反発しましたが、米金融引締め懸念やウクライナ情勢の緊迫化を背景に、再び売りに押されていました。
 ここでも物流施設が主力の投資法人のNAV倍率は高いままという状況でした。退去が発生しても代替物件の少なさから直ぐに後継テナントの入居が決まるのでの期間がと短いです。代替物件の少なさにより賃料増加交渉も上手くいくケースが多いので賃料収入も増加傾向にあります。当然投資家さんからの人気も上がるという訳です。
 福岡リート投資法人も福岡の成長を上手く数値の面でもアピールできていると思うのですが1倍を下回る結果となっています。地方であることが優位になるコールセンター需要を見込んでオフィスビルの取得も進めており成長期待値は高いのですが、2月はJ-REIT全体で投資口価格が低かったこともあり0.863倍という結果になっています。それでも同じリテール系の日本都市ファンド投資法人が0.837倍であることを考えると良い評価ではないでしょうか。日本都市ファンド投資法人は日神プライベート投資法人等のレジデンス系私募REITの投資口を取得することで収益の安定性を確保したもののあまり投資家さんには伝わっていない状況だと考えられます。
  

・含み益
20220504J-REIT(2月・8月決算)含み益推移
20220504J-REIT(2月・8月決算)含み益推移2

 含み益は鑑定評価額-帳簿価格で算定しています。ここでもGLP投資法人、三菱地所物流リート投資法人といった物流施設特化の投資法人は物流施設の鑑定評価額が大きく上昇しています。オリックス不動産投資法人、ヒューリックリート投資法人、Oneリート投資法人
ではリーシングに時間が掛かってはいるものの鑑定評価額が上昇している物件、下落している物件にバラつきがあるので、不動産マーケットにおける取引価格も大きな影響を出ていないようです。オフィスビルで鑑定評価額が下落している場合はOneリート投資法人のように稼働率が原因と考えられる場合もありますが、賃料収入の減少により鑑定評価額が下落しているケースもあります。稼働率が減少推移していることは、投資家さんにかなり大きなインパクトを与えます。この稼働率を上げるべく、現在では賃料を減額したり、フリーレント期間を長くすることにより入居を確約している傾向にあります。
 客室稼働率が0とは言わないものの森トラスト・ホテルリート投資法人の減損損失が計上されてしまうことことが心配ですね。なのでホテルはあの手この手でリブランドやニューアルを実施することでブランド価値で時価を引っ張り上げようととしている点が見受けられます。このリブランドやニューアルに釣られて集客も上がることもあるのでこの戦略が悪いと言っている訳ではありませんが、緊急事態宣言やまん防による影響を受けることやインバウンドを期待している宿泊施設が多いので入国制限による影響も受けます。各自治体の施策と連動しての国内旅行者を対象にした集客に力を入れることで当分は耐えるしかないと思います。
 

・稼働率
20220504J-REIT(2月・8月決算)稼働率
20220504J-REIT(2月・8月決算)稼働率2

 オリックス不動産投資法人のオフィス・レジデンスは稼働重視のリーシングによる埋め戻しを推進しました。入替時の賃料単価は減少していますが、稼働率の引き上げを実現しました。オフィスビルでは、エリアや面積毎に賃料設定を慎重に見極めた稼働重視のリーシングで稼働率が回復したことで、需要の強さを再確認したとのことです。
 野村不動産マスターファンド投資法人のオフィスビルは中規模ハイグレードオフィス 「PMO」、クオリティスモールオフィス 「H¹O」、サテライト型シェアオフィス 「H¹T」3タイプを中心に展開しています。サンケイリアルエステート投資法人と同様に中小規模オフィスビルは長引くコロナ禍で空室率が高止まっているので苦戦を強いられています。物流施設では稼働率100%で賃料増額を実現しており、代替物件の少なさを武器に好調な成績を上げています。レジデンスはシングル系物件において、都心5区を中心に稼働率は95.7%となっています。反対に商業施設は稼働率は97.8%となり前期より減少しています。商業施設はかなりバラつきがあり、飲食店のテナントが多いnORBESAやGEMSでは苦戦しているようです。反対にスーパーが主テナントである居住地立地型の商業施設では好調なようです。
 レジデンス系J-REITの日本アコモデーションファンド投資法人では、野村不動産マスターファンド投資法人とは逆にコンパクトタイプの稼働率上昇に苦戦しています。募集賃料の下落率が前期から3.3%ダウンしているのて募集賃料を下げて入居させている状況です。ファミリータイプ好調なようで専有部のリノベーション工事(テレワーク対応のため)の効果が出ています。