2022年6月10日にイオンリート投資法人が日本格付研究所(JCR)から取得している格付けについて見通しが安定的からポジティブになったと発表しました。

格付評価

 長期発行体格付:AA-→AA-
 格付の見通し:安定的→ポジティブ

 イオンリート投資法人はイオンをスポンサーとする商業施設特化型のJ-REITです。現行ポートフォリオは全47物件(国内45物件、海外2物件)で構成され、取得価格総額4,470億円の資産規模となっており、エリアやタイプの分散にも一定の配慮がなされています。
 スポンサーグループとの強固な協働関係をベースとした賃貸事業運営について、コロナ禍の影響は現状限定的であり安定したトラックレコードが示されており、同グループをマスターレッシーとした長期かつ固定賃料のリースストラクチャーの維持、100%で推移しているマスターレッシーの稼働率、相対的に高い収益性をもっています。
 また、2021年8月に実施した公募増資を絡めたパイプラインからの新規物件取得を通じ、資産規模は2021年7月期末比12.6%拡大(取得価格ベース)し、物件分散も進展しており、ポートフォリオ・キャッシュフローの安定性は強化されていくものとJCRでは想定しています。加えてレバレッジコントロールや資金調達などの状況から、財務の健全性が維持されていると評価しています。
 外部成長に関しては2021年8月に「イオンモール高崎」を含む4物件を計502億円で取得しており、今後資産規模5,000億円を目指す方針を示しています。スポンサーグループのパイプラインサポートを通じた相対取引を中心に厳選投資の継続が想定される中、「立地」・「建物設備」・「運営力」に着目した「地域社会の生活インフラ資産」等の投資目線を堅持した形で外部成長が進展していくか、ポートフォリオ分散の動向と併せJCRはフォローしていくとしています。
 内部成長では、年間100億円近い減価償却費を活用した継続的な活性化投資(保有物件の増床・リニューアルなど)により、商業施設としての競争力及び鮮度の維持・向上や差別化が図られ、ダウンサイドリスクへの更なる耐性強化につながっていくか、当該取り組みの成果に注目しているようです。
 簿価LTVは2021年1月期末の41.3%(預り敷金及び保証金を含む場合:44.8%)から、2022年1月期末には41.4%(同:44.7%)へと横這いで推移し、AMの想定する範囲内でコントロールされていることも評価しています。また財務バッファーとなるポートフォリオの含み益は、2022年1月期末で740億円(含み益率:18.5%)を確保しているほか、資金調達面ではメガバンクを中心としたレンダーフォーメーションの維持、新規レンダーの参画、返済期限の分散化、平均残存期間の長期化(2022年1月期期末:4.3年)などの実績が示されている。イオンリート投資法人の特徴である、資産総額に対して相対的に比率の高い減価償却費を背景としたフリーキャッシュフローについて、財務の一段の安定化に資するものとしても評価が可能とJCRではみている。

 以上を踏まえ、格付は据え置くものの、見通しをポジティブに変更になりました。今後もコロナ禍による消費動向をはじめとした外部環境の変化が商業施設運営全般に与える影響には引き続き留意しつつ、賃貸事業運営及び財務運営の動向等を確認し、格付に反映させていくとしています。

 おっ?JCRにしては珍しく減価償却が高いことによるCFの安全性について注目しているとはまるで格付会社みたいじゃないですか。格付評価は、本来なら社債を引き受けた時にちゃんと返済してくれるかどうかを図る指標であるので当たり前なんですけど、今まではのJCRの説明ではそこが抜けていたように思います。まあちゃんと仕事しだしたということは良しとしましょう。テナントがイオンなので生活必需品を扱うスーパーが主体なのでコロナ禍でも商業テナントとしては収益は安定しているので方向性がポジティブになったことは納得ですね。